「あの、ヒイノさん。……これ」
新婦控え室へと戻ってきた葵は、ヒイノの首にガラスのネックレスを返した。
「……これね? 本当はあおいちゃんにプレゼントだったの」
「え?」
「不安定だったあなたに、ものを大切にすることをわかってもらいたかったから。……壊れやすいものを渡して、大事にしてもらっていたの」
「……そう、だったんですね」
「うん。……でも、いつか返ってくるって信じてたわ?」
にこにこと、返した意味をわかったヒイノが嬉しそうに笑う。
「~~っ。……ちょ。ちょっと恥ずかしいな……」
「あらかわいい!」
楽しそうに、照れた葵のほっぺたをつんつんしてくる。
「……ヒイノさん。絵本ありがとうございました」
これのおかげだと言っても過言ではないだろう。よくわかったなあとも思うけど。
「あおいちゃんも、いろいろ付け足していたのね」
「え? も、って……え。もしかして」
「わたしも、同じように文字も隠していたのよ」
そこまでは知らなかった。似たもの親子と言うべきか。
「わたしが隠してたのは『わたし自身』のこと。『ここに住んでるから来てね~』って、メッセージを残していたの」
「か、軽いですね……」
「でも、まさか子どもが来ると思わないじゃない? しかも男の子! ふふっ。びっくりしちゃった」
「あはは……」
葵がそう言うと、ヒイノは小さく笑った。
「……聞いてきなさい。ちゃんと全部。本当の話を」
「……?」
「あなたなら、気付いてあげてくれてるって。……そう信じてるわ」
「ひいのさん……?」
「ほら。彼のとこ、行ってあげるんでしょう?」
彼女の口振りが、少しだけ気になるけれど、葵は大きく頷いた。
「……はい。行ってきます! ヒイノさんも、今日よかったら一緒にご飯食べましょう? たくさん話したいことがあるんです!」
嬉しそうに「わたしもよ」と、彼女は手を振って見送ってくれた。
ここに来た時の白いワンピースに着替えた葵は、レンに大事なものを全部入れておいてもらった鞄だけを持って、首元のハートを揺らしながら、彼が待っているであろうあの丘に急いで駆けていった。



