「――動くな」
突如、ドスの効いた声が低く響く。その人が銃を構え、参加者を黙らせた人がいたおかげで、再びこの空間は緊張感のある静寂に包まれた。
「……え?」
その、聞き覚えのある声に。仮面に手を掛けているその人に。ゆっくりと視線を向ける。
「……こずえ。せんせい……?」
ちょっと。まってよ。わけが。わからないよ。
「……あおいちゃんが、わたしたちのことを守ってくれてるなんて知らなかったの」
「……。ひいの。さん……」
「オレらがお前のことを守ってやってたはずなのに。何やってんだバカ」
「……みずかさんには。言われたくないけど……」
でも。……だめだ。ここにいちゃ……。
「だいじょうぶですよお~?」
「……え……?」
そう言いながら仮面を外したのは……カオル?
「あおいちゃん。お二人はもう、こちらで保護しているから安全よ」
「え。……え? こ、こずえ、せんせい……?」
どう、なってるんだ。
みんなは、一体何を知っているんだ。
「もちろんそれは、あなたの大切な人たちもですよ? あおいさん」
「え。な、なんで……? なんで。あおいくんも……?」
隣の彼でさえ、仮面を外しながら、にっこり笑ってそう言ってくる。
参加者もざわざわと慌て始める。流石に何かがおかしいことに、全員が腰を上げようとするが……。
――パーン! と鳴った銃声でまた動きを止めた。
撃ったのはもちろん持っていたコズエ。ただの威嚇射撃だ。こんな神聖な場所で、血を流すようなことなど、あってはいけない。
「……つらい思いさせて悪かったわあおいちゃん。でも、本当によく頑張ったわね」
「……ちょっと。ほんとうに。理解が追い付かないんですけど……」
聞きたいことがあり過ぎて、パニックだった。寝不足の頭には難題過ぎる。
「『敵を騙すにはまず味方から』と、いうでしょう~?」
「すべての人たちを守るためにあなたのことを利用したこと。本当に申し訳ないと思ってるわ。あとで殴られでも何でもするからね」
「それはぼくがさせませんけどねえ。コズエさんは、ぼくがちゃんと守りますう」
「えー……。なんでそこだけちょっといい雰囲気ー……」
誰か、お願いだから説明をしてくださいよ。
「私が【公安】だと言えば、……あなたなら納得してくれるかしら」
「――――!!」
公安警察とは、警察組織のうち、公共の安全の維持を目的とする組織のことだ。
「初めは私の母の任務だったのだけれどね。……失敗はしたものの生きてはいるわ。安心して」
「……うそ。ほんとうに……」
「ええ。……すべては、今この場にいるお馬鹿な参加者さんたちすべてを捕まえるためだった、ということですう」
カオルの言葉に、参加者が一斉に逃げ出そうとする。
「取り押さえなさい!! 決して誰一人逃がすんじゃないわよ!!」
コズエの一声で、ここのスタッフの人たちに変装した公安が、みんなのことを守りつつ一人残らず捕まえようと飛びかかっていった。



