「……もし。たとえ、俺のことを誘拐しようとしたのがお前でも」
「……っ。あきら。くんっ……」
「たとえ、その時に俺の妻を殺すことになったとしても」
「……しらんっ。さん……」
「たとえ皇を中から崩すために、主にこれを着けたとしたも」
「……。うぅぅ~……。かえで。さんっ……」
「たとえ俺に、罪を犯すようなことをさせていたとしても。これを作ったのがお前だとしても。……俺はお前の執事になれて本当によかったよ、葵」
「……。し、んとっ。なんで……」
シランの傍らには、奥さんのサクラが、写真の中で笑っていた。
「……もし、たとえあおいちゃんが俺から女房をわざと遠退かせたとしても」
「……しおん。さん……」
「たとえ内側から、組を潰そうと計画しとったんがあおいちゃんでもな?」
「まさき。さん……」
「……アオイちゃんが故意にそうしたんじゃないんだから、アオイちゃんのことを誰が責めるの。嫌いになるわけ。……ないじゃんか」
「……かなで。くんっ……」
「あおいちゃん? 襲われちゃったことを気にしてないとは言わないけど、やったのはあおいちゃんじゃないんだもん。あたしは、あおいちゃんのお友達になれて、本当に嬉しいよ?」
「……ゆず。ちゃんっ……」
みんなが仮面を外さなくたって。声だけで。その見た目だけで。雰囲気だけで。誰が誰かなんて十分わかる。
ぽろぽろと。我慢しきれなくなった涙の雫が、葵の目から零れ落ちた。
「……あおいチャンがもし、おれの道を妨げちゃった張本人だったとしても」
「あかね。くん……」
「あおいさんが、おれの足を動かせなくしたんだとしても」
「……ちがや。さんっ」
「……わしを。教え子たちに襲わせたとしてもだ」
「うぅぅ~……。あさじ。さんっ」
「あたしが怒ってるのは、お茶の約束ができてないことよ? ……お茶、絶対にしましょう?」
「なずなさんっ……」
そう言って家族みんなで、仮面越しでも十分わかるくらいにっこり笑ってくれる。
「あーちゃんがもし、おれのお父さんを殺しちゃったんだとしてもね?」
「……。おうりくん。……っ」
「わたしが流産したのもあおいちゃんのせいだったとしても。……おーちゃんにまた会わしてくれたのは、わたしを強くしてくれたのは、あなたよ?」
「かりん。さんっ……」
「アオイちゃんのおかげで、オウは声が出るようになったんだ。俺がこいつらのそばで支えてあげられるようになったのも全部、アオイちゃんのおかげじゃないか」
「ひ。えん。さんっ……」
「そして。最後までぼくの『願い』を叶えてくれたのも君だよ、あおいちゃん」
「……りじちょう。まで……」
大樹の写真と一緒に。ここに来てくれていた。
幸せを奪ってしまったこんな自分に。そんなこと言ってもらう資格なんてないのに……っ。
「俺を自己満足から解放してくれたのは、あおいちゃんだ」
「……。と、ま。さん……」
「この子のこと、気づいてあげられたのは、あおいちゃんだけよ?」
「あやめっ。さん……」
「目標がなかったこいつに、それを作らせたのもあおいちゃんだ」
「……。なつめさん……」
なんで。徳島から。わざわざ来て……。
「あおいちゃんのおかげで、あたしもちゃんと前に進めたのよ」
「……!! ……つばき。さん……?」
「あおいちゃんがいたから、俺らはまたこうして一緒にいられるんだ。……自分の子どもを、見ることができたのは、君のおかげだ」
「いぶき。さん……?」
「ほれほれ。泣かんかったんじゃなかったんかいのお~。……心は崩れんかったかい? あおいさん」
「……。かつらさん。まで……」
どうして。どうして彼らまで来てくれてるんだっ……。



