すべてはあの花のために⑦


「……もし。たとえ、俺のことを誘拐しようとしたのがお前でも」

「……っ。あきら。くんっ……」

「たとえ、その時に俺の妻を殺すことになったとしても」

「……しらんっ。さん……」

「たとえ皇を中から崩すために、主にこれ(、、)を着けたとしたも」

「……。うぅぅ~……。かえで。さんっ……」

「たとえ俺に、罪を犯すようなことをさせていたとしても。これを作ったのがお前だとしても。……俺はお前の執事になれて本当によかったよ、葵」

「……。し、んとっ。なんで……」


 シランの傍らには、奥さんのサクラが、写真の中で笑っていた。



「……もし、たとえあおいちゃんが俺から女房をわざと遠退かせたとしても」

「……しおん。さん……」

「たとえ内側から、組を潰そうと計画しとったんがあおいちゃんでもな?」

「まさき。さん……」

「……アオイちゃんが故意にそうしたんじゃないんだから、アオイちゃんのことを誰が責めるの。嫌いになるわけ。……ないじゃんか」

「……かなで。くんっ……」

「あおいちゃん? 襲われちゃったことを気にしてないとは言わないけど、やったのはあおいちゃんじゃないんだもん。あたしは、あおいちゃんのお友達になれて、本当に嬉しいよ?」

「……ゆず。ちゃんっ……」


 みんなが仮面を外さなくたって。声だけで。その見た目だけで。雰囲気だけで。誰が誰かなんて十分わかる。

 ぽろぽろと。我慢しきれなくなった涙の雫が、葵の目から零れ落ちた。



「……あおいチャンがもし、おれの道を妨げちゃった張本人だったとしても」

「あかね。くん……」

「あおいさんが、おれの足を動かせなくしたんだとしても」

「……ちがや。さんっ」

「……わしを。教え子たちに襲わせたとしてもだ」

「うぅぅ~……。あさじ。さんっ」

「あたしが怒ってるのは、お茶の約束ができてないことよ? ……お茶、絶対にしましょう?」

「なずなさんっ……」


 そう言って家族みんなで、仮面越しでも十分わかるくらいにっこり笑ってくれる。



「あーちゃんがもし、おれのお父さんを殺しちゃったんだとしてもね?」

「……。おうりくん。……っ」

「わたしが流産したのもあおいちゃんのせいだったとしても。……おーちゃんにまた会わしてくれたのは、わたしを強くしてくれたのは、あなたよ?」

「かりん。さんっ……」

「アオイちゃんのおかげで、オウは声が出るようになったんだ。俺がこいつらのそばで支えてあげられるようになったのも全部、アオイちゃんのおかげじゃないか」

「ひ。えん。さんっ……」

「そして。最後までぼくの『願い』を叶えてくれたのも君だよ、あおいちゃん」

「……りじちょう。まで……」


 大樹の写真と一緒に。ここに来てくれていた。

 幸せを奪ってしまったこんな自分に。そんなこと言ってもらう資格なんてないのに……っ。



「俺を自己満足から解放してくれたのは、あおいちゃんだ」

「……。と、ま。さん……」

「この子のこと、気づいてあげられたのは、あおいちゃんだけよ?」

「あやめっ。さん……」

「目標がなかったこいつに、それを作らせたのもあおいちゃんだ」

「……。なつめさん……」


 なんで。徳島から。わざわざ来て……。


「あおいちゃんのおかげで、あたしもちゃんと前に進めたのよ」

「……!! ……つばき。さん……?」

「あおいちゃんがいたから、俺らはまたこうして一緒にいられるんだ。……自分の子どもを、見ることができたのは、君のおかげだ」

「いぶき。さん……?」

「ほれほれ。泣かんかったんじゃなかったんかいのお~。……心は崩れんかったかい? あおいさん」

「……。かつらさん。まで……」


 どうして。どうして彼らまで来てくれてるんだっ……。