すべてはあの花のために⑦


『藍さん。あなたは葵さんと結婚し、妻としようとしています』


 神父がアイに言葉を少しずつ、ゆっくりと言葉にしている。


((あおい、もうすぐみんなとはおわかれよ?))

「(うん。そうだね)」


 もう一人が、そっと心配そうに語りかけてくれる。


((本当にいいの? このままで))

「(そんなのよくないに決まってるじゃあーん! 何を言ってるんだちみはっ)」


『あなたは、この結婚を神の導きによるものだと受け取り』


((……そっか。ちゃんと信じてるんだね))

「(あったりまえよ~。わたしには今、信じることしかできないからね?)」


『その教えに従って、夫としての分を果たし』


((ちゃんと、言っておこうと思って))

「(え? なにを?)」


『常に妻を愛し、敬い、慰め、助けて変わることなく』


((今まで、本当にありがとう))

「(……わたしも、ありがとう。たくさん、助けてもらった)」


 葵は瞳を閉じ、最後の言葉を交わす。


『その健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も』


((守れてないっ。……わたしは。最後まで葵を苦しめることしか……))

「(何言ってるんだ~。最後にちゃんと教えてくれたじゃん。……たくさん罪を重ねさせてごめんね。でも、わたしの命を、最期まで守ってくれてありがとう)」


『死が二人を分かつときまで、命の日の続く限り』


((……ずっと言いたかったんだ。謝りたかった。名前を取ったことも全部))

「(今言ってくれたじゃん。……だから、これでチャラだ。あおいくんのこと、見守ってあげててね)」

((葵。ありがとう。幸せだった。葵といられて。つらいことばっかりだったけど、でも葵が幸せなら、わたしも幸せだから……))


『あなたの妻に対して、堅く節操を守ることを』


「(ありがとう。……わたしもいろいろごめんね。嫌っちゃったりして。でも、よかった。海で死んでたらきっと、こんな一時の幸せも知らなかった。あなたのおかげで、わたしは最高に幸せ者だっ)」

((あおいっ。あり、がとう。……っ、今まで。ほんとうにありがとう……っ!))

「(こちらこそ!)」


((さよならっ……!))

「(さよならっ……!)」