『藍さん。あなたは葵さんと結婚し、妻としようとしています』
神父がアイに言葉を少しずつ、ゆっくりと言葉にしている。
((あおい、もうすぐみんなとはおわかれよ?))
「(うん。そうだね)」
もう一人が、そっと心配そうに語りかけてくれる。
((本当にいいの? このままで))
「(そんなのよくないに決まってるじゃあーん! 何を言ってるんだちみはっ)」
『あなたは、この結婚を神の導きによるものだと受け取り』
((……そっか。ちゃんと信じてるんだね))
「(あったりまえよ~。わたしには今、信じることしかできないからね?)」
『その教えに従って、夫としての分を果たし』
((ちゃんと、言っておこうと思って))
「(え? なにを?)」
『常に妻を愛し、敬い、慰め、助けて変わることなく』
((今まで、本当にありがとう))
「(……わたしも、ありがとう。たくさん、助けてもらった)」
葵は瞳を閉じ、最後の言葉を交わす。
『その健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も』
((守れてないっ。……わたしは。最後まで葵を苦しめることしか……))
「(何言ってるんだ~。最後にちゃんと教えてくれたじゃん。……たくさん罪を重ねさせてごめんね。でも、わたしの命を、最期まで守ってくれてありがとう)」
『死が二人を分かつときまで、命の日の続く限り』
((……ずっと言いたかったんだ。謝りたかった。名前を取ったことも全部))
「(今言ってくれたじゃん。……だから、これでチャラだ。あおいくんのこと、見守ってあげててね)」
((葵。ありがとう。幸せだった。葵といられて。つらいことばっかりだったけど、でも葵が幸せなら、わたしも幸せだから……))
『あなたの妻に対して、堅く節操を守ることを』
「(ありがとう。……わたしもいろいろごめんね。嫌っちゃったりして。でも、よかった。海で死んでたらきっと、こんな一時の幸せも知らなかった。あなたのおかげで、わたしは最高に幸せ者だっ)」
((あおいっ。あり、がとう。……っ、今まで。ほんとうにありがとう……っ!))
「(こちらこそ!)」
((さよならっ……!))
「(さよならっ……!)」



