「(……不気味すぎるでしょ……)」
自分も着けているから、人のことは言えないか。
一歩、また一歩と。ヴァージンロードをアイと二人で歩いて行く。こんな結婚式に、義父と歩く必要もないらしい。
最初から最後まで、アイと葵は寄り添って、音楽もなにもない道を歩いて行く。
「……あおいくん」
本当に小さな声で、葵は話しかけた。
「さっき、謝ってくれたね。許してあげて欲しいって。お父様のことを」
「……うん」
「さっきも話したけどさ、あおいくんはやっぱり言う相手が間違ってるよ」
「え……?」
「言ったでしょう? 本当に悪いことをしたのなら確かに謝らないといけないって。……でも、その相手はわたしじゃない。そうでしょう?」
「……でも、あおいさんはその犠牲者の一人だ」
「わたしは加害者だ。あおいくん」
「……っ。そんなこと」
「わかってる。好きでやったわけじゃなかった。わたしも、……もう一人も」
「…………」
「理解してる。騙されて使われていたことも。でも、そんなの本当の被害者からしたら、ただの言い訳に過ぎない」
「……っ」
「でも。……信じてるから」
「あおいさん……」
葵は、仮面越しにアイに笑いかける。
「きっと誰かがわたしを……いいえ。わたしたちを助けてくれるって。そう信じてます。もちろん、あおいくんだけじゃなくて、アザミさんも入ってますよ?」
「え。それじゃあ……」
「きちんと知れてよかった。彼を憎みながら消えてしまうところでした」
「……さっき、信じてるって……」
「信じてますよ? もちろんです。今のは、もし消えてしまったらのことですよ。……消えてしまったら、あなたのことをひとりぼっちにさせないように、もう一人には伝えておきます」
「……! あおいさんっ」
「もしもです。……だって、今日は一緒にご飯食べるんですから」
「……はいっ。楽しみにしてますね?」
二人はぴたり、神父の前に止まる。
葵たちの後ろには、参列者がそれぞれバラバラの仮面を着けていたが、きっとその奥では薄笑いでも浮かべているのだろう。本当に、薄気味悪くて仕方がない。
関係者たちは、顔がバレてはいけない。何故なら、それ相応の地位を持つ権力者ばかりだからだ。
目の前の神父も、もちろん仮面を着けているが、彼は目元のみを覆っているだけ。喋らないといけないからだろう。それは、葵とアイも同様だ。
そして着々と式が進み、……とうとう、誓約の時。



