もう、向こうの山から朝日が顔をのぞかせていた。葵はゆっくりと立ち上がる。
「今までわたしに関わってしまった人たちへ」
本当に、謝って済む問題じゃないことはわかってます。でも、謝らずに消えていくのも嫌でした。本当は、一人一人、頭を下げて謝罪をしに行きたかった。でも、それすらもさせてもらえませんでした。
なので、ここで言ったらいつか誰かが届けてくれるかもしれないから……。
本当に、申し訳ありませんでした。たくさんの人を傷つけました。命さえも奪いました。……けれど、これ以上のことが今から起きてしまうかもしれません。
どうか遠くへ。道明寺の手が届かないところへ、逃げてください。こんなことしか言えなくてごめんなさい。今のわたしにできることは、こんなことしかありません。
守りたかった。すべての人を。でも、守れなかった。結局。すべての人を。
「だからどうか、逃げてください。少しでも長い間、生きてください」
葵は一度深呼吸をして、話をしようと思ったけど、涙が込み上げてきて、上手く言葉にできない。
「……わたしにっ。関わってくれた。人、たちへ……」
今まで。本当に。……ありがとう、ございました。とっても。たのしかった。うれしかった。あったかかった。……しあわせ。だった。
……。っ、ずっと。いっしょにいたい。はなれたくなんか。……ない。あいたい。こえがききたい。はなしたい。ふれあいたい。……わらい。あいたい……っ。
「…………。ぜったいに。しあわせに。なってください。それがわたしの。……しあわせです」
一度、目元の涙を拭い、ぐっと押さえる。
「……っ、これで。さいご。信じてる。……でも。言えなかったら。いやだからね。……。ふうー……」
……わたしは! 生まれてきたことを後悔しました!
たくさんの人を傷つけてきた!
でも! それでも、生まれてきてよかったと思いました!
ほんの一時だけでも、とっても幸せだった!
みんなに、会えた! それがわたしにとっての最高の思い出です!
「いままでありがとう! もう『またね』は言いません! 本当にこれでお別れです! すべての人たちへ! ……っ!」
――さようならっ!!



