「おはようございます、あおいさん」
「おはようレンくん」
時刻は3時。
「すみません。もう一人の方に聞いたら、もう次起きるのは10日の2時以降って言われたので。少しでもと思って一時間寝てもらっていたんです」
「ううん。実は2時に起きたから、一時間寝てないんだな~これが」
葵はレンにスマホを渡す。
「え?」
「充電、してくれてありがとう。もう切ってもらって大丈夫だよ」
葵にそう言われ、レンはスマホの電源を落とし、自分のポケットに入れた。
「……あとで、あの箱の中に入れておきます」
「うん。よろしく」
それからレンが持ってきてくれたオムライスを食べることに。「いただきまーす」と手を合わせ、スプーンを持つ。
「あ。そういえば、わたし寝てすぐ吐かなかった? リアルに。裸見た?」
「…………」
「え。……れ、れんくん。本当に見たの。エッチ」
「裸は見てません」
「じゃあなんで黙ったの?」
「……その。もう一人の方に、味見をしてもらって……」
「え」
葵は一口目のスプーンを、口の前で止めた。
「自分では、上手くできたと思ったんですけど……」
葵は一度スプーンを置いて、もう一度よくよく出てきたオムライスを見た。
「どうやら、もう一人の方のお口に合わなかったみたいで」
さっき口に運ぼうとしていたオムライスを、まるで薬品を嗅ぐかのように、匂いを確かめた。
「そのあともう一度カオルとコズエさんにも食べてもらおうと思ったんですけど、……二人は食べるのを拒否してくるし」
「(もしかして、味音痴……?)」
「でも、何回も練習したんで絶対に大丈夫です」
「…………うっし」
「え。あ、あおいさん……?」
そんなこと言われたら、食べるしかないじゃないか。
葵は意を決し、パクッとオムライスを食べた。
「(もぐもぐもぐ……)」
「………………」
「(もぐもぐもぐ……)」
「………………」
「(もぐもぐも)」
葵の口が止まった。
「……お、美味しく、ないですか……?」
「(……ぽろぽろぽろ……)」
「ええ!? あ、あおいさん!!」
止まったと思ったら、今度は葵の目から涙が出てきた。
「吐きますか!? えー……。上手くいったと思ったんだけどな……」
「(……ふるふるふる……)」
「え……?」
葵はそのあと、泣きながらパクパクとオムライスを食べていった。
「……無理、しないでください」
「……っ、大丈夫だよ? だってもう、MAXわたしの時間短いみたいだし! 無理しても全然平気!」
「不味いなら不味いって言ってくださいよ」
「え? 美味しいよ?」
「冗談はやめてください」
「レンくんも食べてみなよ!」
「ほれ」と、葵はスプーンで一口掬ってレンの口の前に持って行く。
「え」
「ほら、落ちちゃうから」
有無を言わさず、口に突っ込んだ。
「(もぐもぐもぐ……)」
「ね? 美味しいでしょ?」
「……はい。だから最初に美味しく出来たって言ったじゃないですか」
「(ということは、味音痴じゃなくてもしかすると料理が下手なのかな……?)」
こっそりコズエにでも聞いてみよう。
「なら、なんで泣いていたんですか」
「……うれしくて」
「え?」
「一生懸命練習したって聞いて。……たとえ美味しくなくても、わたしは美味しいって言って食べてたと思うよ」
「だから、ありがとう」と、葵はにっこり笑顔のままオムライスを完食した。
「ご馳走様でした!」
「……お粗末様でした」



