「それじゃあ、俺についての質問にいこうか」
どうやら、やっとこさこの話題に来られたようだ。みんなはシントの言葉に大きく頷く。
「もし個人的に聞きたいことがあるのなら、それはあとで俺の連絡先を教えるからそこから聞いてきて? 俺がここを出て、ここへ帰ってきた話についての質問を、今は答えるよ」
シントの真面目な顔に、みんなの姿勢がすっと伸びる。
「時系列順に行こうか。最初は……紀紗ちゃん、かな?」
「え? 質問したのだいぶ前……しかもみんな一気に言ったのに、覚えていらっしゃるんですか?」
「うん。葵ほどではないけど、俺もそこそこ頭は良い方だから」
それからシントは、みんなの質問に一つずつ答えていく。
「ぶっちゃけ鋭い質問だと思ったよ。葵は、本当はこう言ったんだ」
『わたしとおともだ、……えっと、わたしの執事になりませんか?』
「……あっちゃんは、最初信人さんと友達になろうとした?」
「うん。そうだね」
「……じゃあ、やっぱり仮面を着けてるのは……」
その独り言のような問いに、信人はにこりと笑って答えてあげる。
「(そういうことなのか……)あっちゃんは、友達を作りたいけど作れないってことですか」
「そうだね。作らせてもらえないね」
「……っ、あっちゃん」
「一応言っておくと、葵が俺を拾ってくれたのは4月6日。葵はその日を俺の誕生日として祝ってくれてたんだ~」
「それってここから逃げた日じゃん」
「そうとも言うね! あー葵に会いたいっ!」
テンション急上昇につき、しばしお待ちください……。
「次は茜くんだね。俺のことを執事として雇う代わりに、俺は自分のことを道明寺に話したよ。葵は知らなかったみたいだけどね」
「そう、ですか……」
「……ただ、葵が俺のことを拾った時、葵の両親は大層嬉しそうだったよ。『いいものを拾った』ってね」
「え……?」
「俺が言えるのはここまで。あとは葵に聞いてみて?」
「……っ、はい」
アカネはとある仮説に至ったが、そうだと思いたくなくて慌てて頭を振った。
「次は……ヒナタくんかな?」
「そうですかね」
「どうやって道明寺が俺を隠したか。どうして皇でも海棠でも見つからなかったのか」
「でも、理事長とは連絡を取っていらっしゃったんですよね?」
「それは、俺からコンタクトを取ったから。葵が理事長の『願い』を叶えるに当たって、俺もそれに乗っかろうと思ったから、俺の方から彼に直接連絡は取った」
「……その乗っかろうっていうのは、『願い』の根本を、その話をあいつから聞いただけでシントさんはわかったってことですか」
「それもあるけど、根本以外にも理由はあるよ?」
「それを教えてもらうことは?」
必死さがうかがえるヒナタに、シントは小さく笑う。
「言い方はいろいろあるんだけど……俺はこう言おうかな?」
『みんなに葵のことを好きになってもらいたかったから』
「これが、俺が乗っかったもう一つの理由」
「そうですか」
「あれ? 気にくわない?」
「いいえ。そうなってヨカッタデスネ」
「え。棒読み……」
「それで? どうやってあなたを隠したんですか?」
「ん? 殺されたんだ」
「はい?」
「だから、死んだことにされてたの」
「でも、行方不明って……」
「だって、遺体なんかあがってこないもん。死んでると確証はないから、世間でそう言われてたってだけ」
「……あの、シントさんが見つかったことって、まだ秘密ですよね」
「あ! うん、そうだよ! みんなまだ言わないでね?! 面倒くさいから! 動けなくなるから俺!」
重要なことをあっけらかんに言うので、みんなの顔は引き攣っていた。



