すべてはあの花のために⑦


 それを、先程言われた通りの部屋を開けた瞬間ぶん投げる。


『上等だ。……お前なんかの思い通りにさせるか!』

『はははは!! ……そうか。それでは、今日からお前はただのシントだ。改めてシント? ようこそ道明寺へ』


 はじめて葵の事情を知った、そして覚悟を決めたシントは、殺気の目で睨んだあと思い切り大きな音を立てて扉を閉めた。

 しかし、最初の威勢はよかったものの。その契約書に、違反を犯した時人質にシントは葵を取られていた。そこからは腸が煮え返る思いだったが、自分の有能な執事を思い出して、家での仕事を熟しつつ、葵の専属執事として正式に雇われることとなった。

 仕事は、薬の仕分け。要は、赤の仕事のフォローだ。葵の世話以外の空いた時間には、あのイヤーカフについても勝手にだが調べることにした。


『(……調べるな、なんて契約書には一つも書かれてなかったし)』


 それから、葵の専属の執事。


『(情緒不安定って……。あの、悲しそうな顔か……)』


 もう大体の開発が終わっている今、最初のシントの仕事としては『葵でいられる時間』を、どうにか長くすること。
 赤は学校になど行かないと、言っているらしいし……。


『(……ターゲットは海棠? おいおいマジかよ)』


 あんな大物まで取り込むつもり……いや、蹴散らすつもりなのか。


『(……赤ともまだ会ったことないな。葵に聞いてみるか……)』


 自分が葵の犠牲者なんて、絶対に言いたくなどなかった。言って、傷つくのが目に見えている。


『(赤に削られるってのもよくわからないし、葵に聞いてみるしかない、か……)』


 でも、きっと言いたくないのかもしれないな。


『(……大丈夫だ。お前のこと、ちゃんとわかってやってるから)』


 まずは、葵の心の修復。こんなことされたら、誰でもポッキン折れるわ。


『(さてさて。初仕事と行きますか)』


 シントは葵の部屋の扉を、笑顔で開け放った。


 日の光を遮断し、枯らした花は…………


                  百
                  合
                  の
                  花。