それを、先程言われた通りの部屋を開けた瞬間ぶん投げる。
『上等だ。……お前なんかの思い通りにさせるか!』
『はははは!! ……そうか。それでは、今日からお前はただのシントだ。改めてシント? ようこそ道明寺へ』
はじめて葵の事情を知った、そして覚悟を決めたシントは、殺気の目で睨んだあと思い切り大きな音を立てて扉を閉めた。
しかし、最初の威勢はよかったものの。その契約書に、違反を犯した時人質にシントは葵を取られていた。そこからは腸が煮え返る思いだったが、自分の有能な執事を思い出して、家での仕事を熟しつつ、葵の専属執事として正式に雇われることとなった。
仕事は、薬の仕分け。要は、赤の仕事のフォローだ。葵の世話以外の空いた時間には、あのイヤーカフについても勝手にだが調べることにした。
『(……調べるな、なんて契約書には一つも書かれてなかったし)』
それから、葵の専属の執事。
『(情緒不安定って……。あの、悲しそうな顔か……)』
もう大体の開発が終わっている今、最初のシントの仕事としては『葵でいられる時間』を、どうにか長くすること。
赤は学校になど行かないと、言っているらしいし……。
『(……ターゲットは海棠? おいおいマジかよ)』
あんな大物まで取り込むつもり……いや、蹴散らすつもりなのか。
『(……赤ともまだ会ったことないな。葵に聞いてみるか……)』
自分が葵の犠牲者なんて、絶対に言いたくなどなかった。言って、傷つくのが目に見えている。
『(赤に削られるってのもよくわからないし、葵に聞いてみるしかない、か……)』
でも、きっと言いたくないのかもしれないな。
『(……大丈夫だ。お前のこと、ちゃんとわかってやってるから)』
まずは、葵の心の修復。こんなことされたら、誰でもポッキン折れるわ。
『(さてさて。初仕事と行きますか)』
シントは葵の部屋の扉を、笑顔で開け放った。
日の光を遮断し、枯らした花は…………
百
合
の
花。



