すべてはあの花のために⑦


『あの、こちらにお住まいなんで』

『いや、そんなわけないよね』

『そ、そうですか……』


 被せ気味でそんなことを言われてしまった。


『……ちょっと、わけあって家出中』

『え……?』

『いやなことあって。……今、家に帰れない。帰ったら、俺多分殺される』

『ええ……!?』


 それは大変じゃないか! それに……。


『……家に、帰りたくない……』

『……?』


 自分と一緒だった。帰りたく、なかった。


『……あの、助けてあげられるかも、しれません』

『え?』


 ……ううん。助けて、欲しかった。


『……もし、よかったらで。いいんですけど』

『………………』


 ただ家に、……一人でいたくなかった。


『わたしの家来になりませんかっ!?』

『はいぃ!?』


 あ。間違った。これ言うのは小動物相手だった。


『間違えました! わたしと一緒に住みませんか?』

『え? ええ!?』


 ただ今シントは、一目惚れ……からの、まさかの告白に変な妄想中。


『……えっと。友達……は、仲良し。だから。ダメだから……』

『??』


 葵は一度、姿勢を正して、シントに告げる。


『しんとさん! わたしとおともだ、(だからダメだってっ!!)……えっと、わたしの執事になりませんか?』

『……はい?』


 つい、ぽろっと本音が出そうになったけど、目の前の彼まで消えてしまうのは嫌だった。


『……あの。お家、帰れないんですよね?』

『……まあ、そうだけど』

『お家に、見つかったらダメ、なんですよね?』

『……うん。そうだね』

『……ウチなら、何とかなるかもしれません』

『え?』


 大丈夫だろう。きっと、彼のことを隠してあげられるだろう。隠し方は、最低かもしれないけど。
 でも、今目の前の彼だけでも、助けてあげたい!


『お仕事とかしてもらうようになるかもしれないんですけど、ウチお金あるし。もしあれだったら、そのお金が貯まるまででも構いません』

『…………』

『……もしで。いいんです。しんとさんの事情もあるでしょうし』

『…………』

『ちょっと変わった家なので。……嫌になってしまうかも』


 今にも消えてしまいそうだった葵の手を、シントはそっと握る。


『え……?』

『行く』

『え……??』

『なる。執事』

『ほ、ほんとですか……?』

『うん。……君のお世話、してあげる』

『……!! 一緒に、いてくれるんですか……?』

『専属ってなったら、そうなるんじゃない?』

『うわあ!! はい! ありがとうシントさん!』

『…………こちらこそ、ありがとう』


 やった。これで可愛い女の子と一つ屋根の下~と。内心喜んでいるシントに、葵の衝撃の事実が突き付けられる。