『あの、こちらにお住まいなんで』
『いや、そんなわけないよね』
『そ、そうですか……』
被せ気味でそんなことを言われてしまった。
『……ちょっと、わけあって家出中』
『え……?』
『いやなことあって。……今、家に帰れない。帰ったら、俺多分殺される』
『ええ……!?』
それは大変じゃないか! それに……。
『……家に、帰りたくない……』
『……?』
自分と一緒だった。帰りたく、なかった。
『……あの、助けてあげられるかも、しれません』
『え?』
……ううん。助けて、欲しかった。
『……もし、よかったらで。いいんですけど』
『………………』
ただ家に、……一人でいたくなかった。
『わたしの家来になりませんかっ!?』
『はいぃ!?』
あ。間違った。これ言うのは小動物相手だった。
『間違えました! わたしと一緒に住みませんか?』
『え? ええ!?』
ただ今シントは、一目惚れ……からの、まさかの告白に変な妄想中。
『……えっと。友達……は、仲良し。だから。ダメだから……』
『??』
葵は一度、姿勢を正して、シントに告げる。
『しんとさん! わたしとおともだ、(だからダメだってっ!!)……えっと、わたしの執事になりませんか?』
『……はい?』
つい、ぽろっと本音が出そうになったけど、目の前の彼まで消えてしまうのは嫌だった。
『……あの。お家、帰れないんですよね?』
『……まあ、そうだけど』
『お家に、見つかったらダメ、なんですよね?』
『……うん。そうだね』
『……ウチなら、何とかなるかもしれません』
『え?』
大丈夫だろう。きっと、彼のことを隠してあげられるだろう。隠し方は、最低かもしれないけど。
でも、今目の前の彼だけでも、助けてあげたい!
『お仕事とかしてもらうようになるかもしれないんですけど、ウチお金あるし。もしあれだったら、そのお金が貯まるまででも構いません』
『…………』
『……もしで。いいんです。しんとさんの事情もあるでしょうし』
『…………』
『ちょっと変わった家なので。……嫌になってしまうかも』
今にも消えてしまいそうだった葵の手を、シントはそっと握る。
『え……?』
『行く』
『え……??』
『なる。執事』
『ほ、ほんとですか……?』
『うん。……君のお世話、してあげる』
『……!! 一緒に、いてくれるんですか……?』
『専属ってなったら、そうなるんじゃない?』
『うわあ!! はい! ありがとうシントさん!』
『…………こちらこそ、ありがとう』
やった。これで可愛い女の子と一つ屋根の下~と。内心喜んでいるシントに、葵の衝撃の事実が突き付けられる。



