言いきる前に、少女が葵のことをぎゅうっと抱き締めてきた。
『え……? え……??』
少女は抱き締めてきてくれて、葵にふわりと、綺麗な笑顔を見せてくれる。
『(……。あったかい……)』
体も心も、少女のそんな仕草だけであったかくなる。
『……どう?』
『え……?』
また完全にあっちのペースである。
『な。……なにが?』
『スッキリした?』
そう聞いてくる少女に。葵はよくわからなかったので首を傾げた。
『……よく。わかんない……』
『ま、そうだろうね』
『え……!?』
そんなことを言って、少女は葵から離れて、また隣に座った。
『じゃあ、スッキリするまで言ったらいいよ』
『えっ?』
『ほら、早く言え』と、少女が目で急かしてくる。葵は慌てて、たくさんの気持ちを言葉にした。
やっぱり涙が出て、言ってもどうにもならないんだってことがちゃんとわかった。でも、なんだかそんなことを言ってる自分がバカらしくなって、途中から笑いが漏れる。
『禿げっ。ケバ嬢っ。……ははっ』
『…………?』
でもお腹を抱えながら、目元に涙の雫を付けて笑っている葵を見て、少女はふっと頬が緩んだ。
『……やっと笑った』
『え……?』
たったこれだけのことで、少女は嬉しそうに笑顔を向けてくれた。
『すごくきれいでかわいかったから、笑った顔が早く見たかったの』
『わ、わたしなんかきれいじゃないし。かわいくなんか……あ。あなたの方が、とってもかわいいよ?』
『……かわいくないよ。だってあたしは汚いもん。真っ黒だもん』
確かに少女は真っ黒の髪で、とてもそれが綺麗だ。
『そんなことないよ? 黒くてとってもきれい。……わたしの方が、もう真っ黒だよ。汚れちゃってる』
『あなたはきれいだよ!』
『ううん! あなたの方が!』
そんな言い合いをしているのも、なんだかバカらしくなった。
『あ。そろそろ行かないと』
『え……』
どうやら、お別れの時間のよう。
『今、友達と遊んでるの。それから今脱出してきたから、時間かせぎもきっとここまでが限界』
『(それ、遊ぶのから逃げてきたのでは……?)』
『……また、会える?』
『え……』
不安そうに、少女は尋ねた。
『……また。会ってくれる……?』
葵も、会いたかった。少女と一緒にいるだけで、胸が温かくなったから。
葵も不安そうに聞くと、少女はうんと小さく頷いてくれた。
『……それ、あげる』
『え?』
そう言って少女は葵の頭を指差して、走って行ってしまう。
『忘れないでね? また会って?』
『……っ、うん! 約束だよ!』
そう言ってお互い手を振って、会う度最後は『またね』と、次の約束をして帰った。
葵は、ここに来るのがとても楽しみだった。来たら最初は絶対に泣いて。泣くのが落ち着いた頃、少女は葵を抱き締め、にこっと笑ってくれた。
なんでそうしてくれるのか聞いたら、『だって、笑って抱き締めてって言ったから』って。やっぱりばっちり聞こえてたみたい。でもそうしてくれるのが嬉しくって、葵も少女にぎゅうっと笑いながら抱きついたりした。



