すべてはあの花のために⑦


「(……なに。こんなのわたし。知らないよ……?)」


 それから赤は、こういう話だけは葵に日記で伝えていた。この頃から葵はもう、赤が何をしているのか聞くことはできていなかったから。


「(……確かに。そう、だけど)」


 そのことを知った葵は塞ぎ込むようになり、赤でいる時間が長くなっていた。


『……今日は何。まだできてないわよ』

『今日はお前に、話の仕事だ』


 そう言って見せてきたのは、薬の密売していたと嘘を教えられた家族の写真。


『まあその話と関係ないことはないか。手始めにここを壊せ』

『はあ!? ちょっと待ってよ! もう十分でしょ!? 旦那さんを殺した……も同然だし。十分苦しんでる! こわれるよ!! 何もしなくたって』

『はっ。そんな生ぬるいことをするわけないだろう。さあ、お前の途中の薬を試せ』

『……どうせ。断らせないんでしょ』

『断って犠牲になる奴らが可哀想だな』

『くっ……。……わか、った』


 そして赤は女性に、とあるルートで薬を忍び込ませた。


『え。……りゅ、流産……』

『お前のおかげで壊れた。何もかもな。これで、ここはもうダメだな』


 ケラケラ、嫌な嗤い方をする。腸が煮え返りそうだ。


『女は精神的に壊れた。お腹の子どももおだぶつだ。もう一人の子も……そうだな。心が冷え切ったか』


 愉しそうに、そんなことを言う。


『(……殺したい。殺したい。殺したい……!!)』


 でも、そんなことできなかった。本当に、葵を犯罪者に仕立て上げてしまうから。


『(だれか。……だれかっ、葵を助けてよ……っ)』


 そんな人、いるはずもない。ただ赤は、心の中でだけ涙を流す。


『もう一つ、話をしよう』

『……なに』


 そう言って見せられたのは、以前赤が手を下したところの家だ。


『残念だが、決定打が足りなくてな。倒産まで持って行きたい。考えろ』


 拒否権なんて、なかった。


『(わたしが。彼を欲しいなんて言わなければ……)』


 いや、どの道ここへ辿り着くのだろう。だって最初から、この目の前で嗤っている人はこんなことをして、自分は罪に手を染めないつもりだったのだから……。

 それから赤は、内通者を利用し、正規品に混ぜて不良品を売り出そうと計画をした。その指示を聞いたアザミは、愉しそうに嗤っていた。


『失敗をさせようなんて、考えないことだ』

『……っ』


 そんなことをしてみろ、と。失敗をわざとさせるような計画を立てたなら……と。


『(……どう。すれば……)』


 葵も塞ぎ込み、一日に半々ぐらいで赤が出てきている。


『(……だれか。たすけてっ……)』



 枯れてしまったにも関わらず踏み潰した花は…………


                  サ
                  ク
                  ラ
                  ソ
                  ウ。



 腐った根元から倒してしまったのは…………


                  ア
                  ネ
                  モ
                  ネ。