「(……なに。こんなのわたし。知らないよ……?)」
それから赤は、こういう話だけは葵に日記で伝えていた。この頃から葵はもう、赤が何をしているのか聞くことはできていなかったから。
「(……確かに。そう、だけど)」
そのことを知った葵は塞ぎ込むようになり、赤でいる時間が長くなっていた。
『……今日は何。まだできてないわよ』
『今日はお前に、話の仕事だ』
そう言って見せてきたのは、薬の密売していたと嘘を教えられた家族の写真。
『まあその話と関係ないことはないか。手始めにここを壊せ』
『はあ!? ちょっと待ってよ! もう十分でしょ!? 旦那さんを殺した……も同然だし。十分苦しんでる! こわれるよ!! 何もしなくたって』
『はっ。そんな生ぬるいことをするわけないだろう。さあ、お前の途中の薬を試せ』
『……どうせ。断らせないんでしょ』
『断って犠牲になる奴らが可哀想だな』
『くっ……。……わか、った』
そして赤は女性に、とあるルートで薬を忍び込ませた。
『え。……りゅ、流産……』
『お前のおかげで壊れた。何もかもな。これで、ここはもうダメだな』
ケラケラ、嫌な嗤い方をする。腸が煮え返りそうだ。
『女は精神的に壊れた。お腹の子どももおだぶつだ。もう一人の子も……そうだな。心が冷え切ったか』
愉しそうに、そんなことを言う。
『(……殺したい。殺したい。殺したい……!!)』
でも、そんなことできなかった。本当に、葵を犯罪者に仕立て上げてしまうから。
『(だれか。……だれかっ、葵を助けてよ……っ)』
そんな人、いるはずもない。ただ赤は、心の中でだけ涙を流す。
『もう一つ、話をしよう』
『……なに』
そう言って見せられたのは、以前赤が手を下したところの家だ。
『残念だが、決定打が足りなくてな。倒産まで持って行きたい。考えろ』
拒否権なんて、なかった。
『(わたしが。彼を欲しいなんて言わなければ……)』
いや、どの道ここへ辿り着くのだろう。だって最初から、この目の前で嗤っている人はこんなことをして、自分は罪に手を染めないつもりだったのだから……。
それから赤は、内通者を利用し、正規品に混ぜて不良品を売り出そうと計画をした。その指示を聞いたアザミは、愉しそうに嗤っていた。
『失敗をさせようなんて、考えないことだ』
『……っ』
そんなことをしてみろ、と。失敗をわざとさせるような計画を立てたなら……と。
『(……どう。すれば……)』
葵も塞ぎ込み、一日に半々ぐらいで赤が出てきている。
『(……だれか。たすけてっ……)』
枯れてしまったにも関わらず踏み潰した花は…………
サ
ク
ラ
ソ
ウ。
腐った根元から倒してしまったのは…………
ア
ネ
モ
ネ。



