ちょっと残念そうに落ち込む彼に、“重なるはずもないもの”が重なって、胸がきゅっと締め付けられる。
『……でも。もうちょっといる』
『……いいの?』
『お話、聞いてあげるよ? どうして寂しそうなの?』
そうだ。彼は寂しそうなのだ。
赤がそう言うと、彼は目を見開く。
『なんでわかるの』
『え? 顔?』
『おれ、無表情でゆうめい』
『そ、そうなんだ……』
『だから、なんでわかるの?』
『……勘、かな』
『ふーん』
なんだか納得してないようだったけど、小さく彼は寂しい理由を零す。
『……きょう。おれのたんじょうび』
『そうだね。おめでとう』
『……でも、かあさんとしんにい、いない』
『え?』
『だから、ちょっとさみしい。いつも祝ってくれるのに。知らない人に祝われたってうれしくない。……とうさんもしごと。おれひとりだし。さみしかった』
そう言って膝に顔を埋める彼を見て、赤の心の奥底が大きく揺れた。
『(……やっぱり、似てるから、か……)』
ふうと一つ、赤は息を吐いた。
『……きっとだいじょうぶ』
『……? なにが』
『お祝い、してくれるよ』
『……でも、いないもん』
『だいじょうぶ。今までずっと祝ってもらってたんでしょう? だったらちゃんと祝ってくれる。大丈夫』
『……そっか。うん。ありがとうりんごさん』
『り、りんごさん……?』
『まっかなどれす。まっかなかお。……うん。りんごさん』
『そ、そう……』
でもまあ、名乗れるわけじゃない。
『(……でもわかる。これは、わたしの『好き』だ)』
未だにバクバクいってる心に、手を当てる。
『(……わたしは、やると決めたらとことんやる)』
もう時間だ。流石にアザミに怒られるだろう。その時ちょうど、彼のスマホにも電話が入る。きっと、母と兄からだ。
嬉しそうな横顔を見ながら、赤はその場を去って行った。
『(……決めた。絶対あの子にする)』
標的となった花は…………
蘭
の
花。



