それからアザミの方から二人に何度も引き取りの申し出をしてくれた。葵の意思が聞きたいということで、アザミが帰ってから二人と話をした。
『……あおいちゃん。いきなりどうしたの……』
『あおい。なんでそんなこと……』
二人の、葵を見つめる瞳が悲しげに揺れている。
『(あのことは。言っちゃいけない。から……)』
葵は、ぎゅっと小さな手を握って二人に視線を合わせる。
『おためしきかんを、しゅうりょうしたいと、思います』
『……あおいちゃんっ!』
『……どうしてだ』
低く、少し苛立ちがこもったミズカの声にたじろぐ。でも、ここでまた一緒にいたいって言ったら、二人がもっと不幸になるかもしれない。
『あの、あざみさんのところに、いきたいんです』
行ったら、きっとお役に立てる。
『お二人には、とってもよくしてもらいました』
これ以上ないほど。……もしかしたら、これが愛おしい気持ち、なのだろうか。わからない。
『でも、たくさんのこと、知りたいんです。それができるのは、ここじゃない』
『――!!』
『…………っ』
悔しそうに二人の顔が歪んでいる。
そのあと二人は、本当に悔しさを滲ませた声で、了承してくれた。
『……わかったわ……』
『お前が。……そう、言うなら……』
そして、翌年の春先。葵が小学校に上がる年。道明寺に引き取られることが決まったのだった。



