それから葵は、二人には心を閉ざすようになってしまいました。二人はどうしたらいいかわからず、悩んでいました。
『こんにちはあおいちゃん』
『……あ! あざみさん!』
でも、アザミが訪れる時は嬉しそうにする葵を見て、二人は苦虫を噛み潰したような顔をいつもしていました。
『(あ。そういえば、一緒にお話……しなくていいのかな?)』
前もそんなことを言われたような気がしたけど、二人がアザミを見る視線が怖くて、そんなこと言えませんでした。
『あおいちゃん? 花壇のとこ行く?』
『……! はい! 行きます!』
それから二人で話す時は、必ず花壇のところで内緒話をするように話をしていた。
『今日はね、お話を持ってきたんだよ』
『おお! お手伝い! がんばりますっ』
そう言って彼が見せてきたのは…………あれ? この間の人?
『……あざみさん? このひと、おくすりみつばいした……』
『そう。よく覚えているね』
よしよしと、頭を撫でてくれる手がとっても温かかった。
『この間捕まえたんだよ』
『ほんとですか! すごい!』
『それもあおいちゃんのおかげだ。ありがとう』
『おやくに立ってる! よかったです』
綻ぶ葵の顔を、やさしくアザミが撫でる。
『でもね? やっと捕まえたのに逃げられてしまったんだ』
『ええ!? そ、それは大変です!』
『うん。……でもね。悪いことしたって思ったのか自害したんだよ』
『え……』
顔が暗くなる葵の頭を、やさしく撫でる。
『あおいちゃんが悪いことなんて一つもないんだよ? 自害されたのは悔しかったけど、でもこれで一つ犯罪を阻止できた。今日は、その報告もしたかったんだ。ありがとう』
『……死ぬのは。いや』
『……あおいちゃん?』
急に葵の雰囲気が変わる。アザミは、にやりと口角を上げる。
『こんにちは。もしかして、もう一人のあおいちゃんかな』
『……どうみょうじ、あざみ……?』
そう切り替えしてきた彼女の瞳は、真っ赤に染まっていた。
『いい目をしている。やはり私の目に狂いはない』
『……なに』
『そうだ。君ならどうするか聞いてみるのも楽しそうだ』
そう言ってアザミは、もう一枚の写真を取り出す。
『ここの会社は、多くの犠牲を生んで成り上がった会社なんだ』
『………………』
『我が物顔でトップに居座るその会社を、私は潰してやりたい。……何か案はあるかな』
『……ぼうりょくだんと、おなじことすれば?』
『……おなじこと?』
『……うちがわから、こわせば?』
至って淡々と答える葵に、嬉しそうに頬が緩む。
『(……内部から攻撃か。なるほど)』
完全に枯れてしまった花の名は…………
サ
ク
ラ
ソ
ウ。
そして、根っこを腐らせてしまったのは…………
ア
ネ
モ
ネ
の
花。



