そして葵は、そんな二人の愛情を真っ直ぐに受け止めて、二人にたくさんのことを教わりました。
花壇のお世話もちゃんとして、葵なりの愛情を注ぎ、大きな葉になったものが蕾をつけ、もう少しで花が咲きそうでした。
『あ! もしかしてこの花って!』
見たことがある。よく知っている花だ。
『わたしのお花かもしれない!』
葵は急いで二人に報告したくてたまりませんでした。しかも今日は日曜日。二人とも家でゆっくりのんびりしています。どっちから行こう。やっぱりここは、種持ってきてくれたミズカだろうか。
そう思って葵は、ミズカの一応部屋があったので、そこに行ってみることにした。
『みじゅかさんみじゅか…………さ、ん……』
扉が、少しだけ開いていました。中からミズカと、ヒイノではない女の人の、どこか妖しい声が聞こえてきました。
『……みじゅか。さん……?』
葵は、怖かったけどその部屋の中を覗いてしまいました。
『(……え)』
そこには、裸になって体を一つにしているミズカと、知らない女性がいました。
『(……。な、なに……)』
その時、ミズカの上に乗っている女性と目が合いました。葵のことを見た瞬間、口の前に一本だけ立てた指を持って行きにやりと笑ったあと、ミズカの唇にキスを落としていました。
『(……っ、な、なに……?)』
葵は急いでヒイノのところへと向かいました。いつもは台所にいたりリビングにいるのに、どこにもいません。
『(……ねる、ところ……?)』
葵は大急ぎで向かいましたが、そこも扉が開いていました。
そこから漏れてくるのは、ヒイノの甲高い声と、ミズカではない知らない男性の、楽しげに嗤う声……。
『ひ。……ひいの。さん……』
葵は、また扉の隙間から部屋を覗きました。
『いやあー、子供できないって気を遣う手間が省けていいですねっ』
そこでも、二人が裸で体を重ねていました。男性と、葵は目が合いました。すると、その人は楽しげに嗤い律動を早め、ヒイノの唇に自分のそれを重ねていました。
『……。う、そ』
葵はその場から離れないとと思い、ダッシュで家を飛び出し花壇のところへ行きました。
『……っ。はあ。はあ』
うそだ。……うそだっ、うそだっ……。
どくどくと。耳の奥から、怯える心臓の音が聞こえてくる。
『……。あい、って。……なに……?』
葵は、咲きそうだった花を、掴みました。
『おとうさんも。おかあさんも。……わたしのっ。せいで……』
一本。また一本と、葵は花を抜きました。
『……ふたりともっ。わたしのせいで……?』
その花壇の花を、ひたすら抜きました。
『……あいって。なに……っ』
どくん。
『とくべつって。……なに』
どくっ。
『……いとおしいって、なに』
どっ。
『……もう、なにもわからない』
葵の瞳は赤く汚れ、葵が落ち着くまで花壇を荒らし、花を踏み潰しました。



