すべてはあの花のために⑦


 そして葵は、そんな二人の愛情を真っ直ぐに受け止めて、二人にたくさんのことを教わりました。
 花壇のお世話もちゃんとして、葵なりの愛情を注ぎ、大きな葉になったものが蕾をつけ、もう少しで花が咲きそうでした。


『あ! もしかしてこの花って!』


 見たことがある。よく知っている花だ。


『わたしのお花かもしれない!』


 葵は急いで二人に報告したくてたまりませんでした。しかも今日は日曜日。二人とも家でゆっくりのんびりしています。どっちから行こう。やっぱりここは、種持ってきてくれたミズカだろうか。
 そう思って葵は、ミズカの一応部屋があったので、そこに行ってみることにした。


『みじゅかさんみじゅか…………さ、ん……』


 扉が、少しだけ開いていました。中からミズカと、ヒイノではない女の人の、どこか妖しい声が聞こえてきました。


『……みじゅか。さん……?』


 葵は、怖かったけどその部屋の中を覗いてしまいました。


『(……え)』


 そこには、裸になって体を一つにしているミズカと、知らない女性がいました。


『(……。な、なに……)』


 その時、ミズカの上に乗っている女性と目が合いました。葵のことを見た瞬間、口の前に一本だけ立てた指を持って行きにやりと笑ったあと、ミズカの唇にキスを落としていました。


『(……っ、な、なに……?)』


 葵は急いでヒイノのところへと向かいました。いつもは台所にいたりリビングにいるのに、どこにもいません。


『(……ねる、ところ……?)』


 葵は大急ぎで向かいましたが、そこも扉が開いていました。
 そこから漏れてくるのは、ヒイノの甲高い声と、ミズカではない知らない男性の、楽しげに嗤う声……。


『ひ。……ひいの。さん……』


 葵は、また扉の隙間から部屋を覗きました。


『いやあー、子供できないって気を遣う手間が省けていいですねっ』


 そこでも、二人が裸で体を重ねていました。男性と、葵は目が合いました。すると、その人は楽しげに嗤い律動を早め、ヒイノの唇に自分のそれを重ねていました。


『……。う、そ』


 葵はその場から離れないとと思い、ダッシュで家を飛び出し花壇のところへ行きました。


『……っ。はあ。はあ』


 うそだ。……うそだっ、うそだっ……。
 どくどくと。耳の奥から、怯える心臓の音が聞こえてくる。


『……。あい、って。……なに……?』


 葵は、咲きそうだった花を、掴みました。


『おとうさんも。おかあさんも。……わたしのっ。せいで……』


 一本。また一本と、葵は花を抜きました。


『……ふたりともっ。わたしのせいで……?』


 その花壇の花を、ひたすら抜きました。


『……あいって。なに……っ』


 どくん。


『とくべつって。……なに』


 どくっ。


『……いとおしいって、なに』


 どっ。


『……もう、なにもわからない』


 葵の瞳は赤く汚れ、葵が落ち着くまで花壇を荒らし、花を踏み潰しました。