『あおいちゃん? あざみさんのお話は楽しかった?』
『はい。わたしなんかが役に立てるか、わからないですけど……』
『ん? 何の役に立つんだ?』
そう聞かれてはじめて、葵は今までアザミに何を聞かれていたのかを二人に話した。
『『………………』』
『あ、れ……? だ、だめ。でしたか……?』
黙ってしまった二人に、葵は不安になってしまう。
『(……だめ。だったのかな。わたしなんか、やっぱり役には立てないのかな……)』
葵が俯いている時、二人は小さく会話をする。
『どういうこと? あざみさん、あおいちゃんに何話してるのかと思ったら……』
『だが、ここであおいがしてきたことが間違いだと知ったらまた落ち着いてるのがおかしくなってしまうかもしれない……』
『でも、ここは正直に言ってあげた方が……』
『……先に、オレたちでアザミさんにどういうつもりなのか聞いてみよう。あおいをこれ以上、苦しめたくはない』
確かに、今まで苦しんできたんだ。それでまた、やってきたことがダメだと知ったら、葵は傷つくだろう。
『……そうね。取り敢えずわたしたちが間に入ってあげましょう』
『ああ。何かあったらいけないからな。あおいを助けてやろう』
二人は大きく頷き合いました。
『あおいちゃん。今度はよかったら、わたしも一緒にあざみさんとお話してもいい?』
『え……?』
『そうだな。オレもアザミさんの話が聞いてみたくなった』
『……。だめじゃ。ない……?』
瞳を潤ませている葵を見て、ああやっぱり隠しておくべきだと、二人は目を合わせて思った。
『あおいちゃんがダメなことなんかないわよ』
『そうだぞ? お前は世界で一番いい子だ!』
『うわ! ……ひいのさん。みじゅかさんっ。くるしいぃぃ……』
二人に思い切り抱き締められた葵は、本当に潰されるかと思った。
それから二人は葵に今まで以上にたくさんのことを教えてくれました。
ミズカは武道を一通り教えていたので、それの強化と野菜の育て方。その時よく言っていたのが『自分の身は自分で守りなさい』。口癖のように、ミズカは稽古の時口にしていました。
ヒイノには感情面を強化されました。それから、道徳や生、世の中の理などを学ばされました。
それから本当に葵を主人公にして絵本を書いてくれると言われたので、ちょっと楽しみに待っていることにしました。
でも、いきなりどうしたのかな? と思ったけど、教えてくれるのはとっても嬉しかったので、葵はたくさんのことを吸収していきました。
…………けれど、もう何もかもが遅かったのです。
悪魔の触手は葵だけではなく、花咲家へも伸ばされていたのですから。



