すべてはあの花のために⑦


『あとは、これだね』

『わー! 道じょう! わたしも、みじゅかさんとよくけいこします』


 そこに写っているのは、そこの生徒さんたちだろう。たくさんの小さなこどもから大人まで。それから年を召した人と、男性と女性。それから葵と同じぐらいの子。


『ここの道場も、生徒たちに対して酷い指導をしているみたいなんだ』

『そんなことまであじゃみさんは知ってるんですね! たいへんですね~』

『(……ま、彼女の実力がどの範囲で、そしてどこまで通用するか試しているだけだがね)』


 そんなことは口に出しては絶対に言わない。彼女を、……手に入れるまでは。


『それでね? そんな指導ばっかりだから、悪い奴らも出てくるんだ。危ないだろう?』

『はい! それはあぶない』

『だからどうにかしてあげたいんだけど、流石にこんな道場に警察も動かせなくてね。どうしたらいいかと困っているんだ』

『あじゃみさんが、ダメです! って言ってあげたらいいんじゃないんですか?』

『でも、私は赤の他人だ。私の話を聞いてもくれないんだろう』

『そっかあ……』


 葵はそう言って、もう一度写真を見た。


『あれ。この人たち……』

『ん? どうかしたのかい?』


 葵が指差すのは、後ろに写ってる生徒の中の五人。


『この人たち、ぼうりょくのお家の人たちですか?』

『え?』


 アザミは、一応写真を持ってきていたのですぐに確かめる。


『……似ている、ね……』


 たったあれだけしか見せていないのに。しかも見せてからしばらく経っていたのに。


『(……やっぱり、欲しい……)』


 アザミの目が、欲望にぎらついた。


『この人たちが、言ったらどうですか?』

『へ?』

『だから、この道じょうのしどうのせいで、ぼくたちは今悪いことしてるんだー、とか言ったらどうですか?』


 現実には、そんなことは有り得ない。ここの生徒なんてやさし過ぎる奴ばっかりだ。それにあの組も。


『(……それを逆手に取るか)』


 組の奴らに、お前らのことを悪く道場の奴らが言ってたみたいなことを言えば、ぷっつんいくかもしれない。
 使えるものは使おう。自分は、彼女を信じている。


『(……それに人を使えば、私などには辿り着くまい)』


 アザミは嬉しそうに頷いて、葵の頭を撫でてから、その日も帰って行った。



 初めに枯らしてしまった花は…………


                  ア
                  サ
                  ガ
                  オ
                  の
                  花。