『あとは、これだね』
『わー! 道じょう! わたしも、みじゅかさんとよくけいこします』
そこに写っているのは、そこの生徒さんたちだろう。たくさんの小さなこどもから大人まで。それから年を召した人と、男性と女性。それから葵と同じぐらいの子。
『ここの道場も、生徒たちに対して酷い指導をしているみたいなんだ』
『そんなことまであじゃみさんは知ってるんですね! たいへんですね~』
『(……ま、彼女の実力がどの範囲で、そしてどこまで通用するか試しているだけだがね)』
そんなことは口に出しては絶対に言わない。彼女を、……手に入れるまでは。
『それでね? そんな指導ばっかりだから、悪い奴らも出てくるんだ。危ないだろう?』
『はい! それはあぶない』
『だからどうにかしてあげたいんだけど、流石にこんな道場に警察も動かせなくてね。どうしたらいいかと困っているんだ』
『あじゃみさんが、ダメです! って言ってあげたらいいんじゃないんですか?』
『でも、私は赤の他人だ。私の話を聞いてもくれないんだろう』
『そっかあ……』
葵はそう言って、もう一度写真を見た。
『あれ。この人たち……』
『ん? どうかしたのかい?』
葵が指差すのは、後ろに写ってる生徒の中の五人。
『この人たち、ぼうりょくのお家の人たちですか?』
『え?』
アザミは、一応写真を持ってきていたのですぐに確かめる。
『……似ている、ね……』
たったあれだけしか見せていないのに。しかも見せてからしばらく経っていたのに。
『(……やっぱり、欲しい……)』
アザミの目が、欲望にぎらついた。
『この人たちが、言ったらどうですか?』
『へ?』
『だから、この道じょうのしどうのせいで、ぼくたちは今悪いことしてるんだー、とか言ったらどうですか?』
現実には、そんなことは有り得ない。ここの生徒なんてやさし過ぎる奴ばっかりだ。それにあの組も。
『(……それを逆手に取るか)』
組の奴らに、お前らのことを悪く道場の奴らが言ってたみたいなことを言えば、ぷっつんいくかもしれない。
使えるものは使おう。自分は、彼女を信じている。
『(……それに人を使えば、私などには辿り着くまい)』
アザミは嬉しそうに頷いて、葵の頭を撫でてから、その日も帰って行った。
初めに枯らしてしまった花は…………
ア
サ
ガ
オ
の
花。



