それから、花壇に毎日お水をあげ、たくさん話しかけ、葵なりの愛情を注いでいると、またアザミがやってきました。
『こんにちはあおいちゃん。今日も水やり?』
『はい! 前のはさむくってかれちゃったので、もう一回ちゃれんじです!』
にっこり笑って、葵はまた水やりをして、たくさんお話をして笑いかけていた。
『はい! 終わりました! おまたせしました、あじゃみさん』
『え? 何も言っていないよ?』
『あれ? おはなし、しないんですか……?』
まるで待っていたかのように言ってくる彼女に、アザミはクスッと笑いが漏れる。
『あれ? ち、ちがいましたか……』
『いいや。私のことを待っていてくれたのかなって思って、嬉しかっただけだよ』
にっこり笑いかけてやっただけで、この小さな女の子も笑ってくれる。
『じゃあ、次はこの人だ』
『……?』
そう言って、アザミはまた写真を今度は二枚取り出して、最初の一枚を出す。そこには至って普通の社会人といった感じの男性が一人、ぽつんと他の社員の端っこに写っている。
『……この人はね、体の悪い奥さんを無理矢理妊ませたんだって』
『え』
『最低だろう? そのせいで奥さんは、子供を産んで死んだんだ』
『…………』
葵は無言のまま、アザミの話を聞いていた。
『権力を持つ知り合いが周りにいるせいか、仕事も真面目にしなくてね。困ったものなんだ。他の社員もいい迷惑で、どうしたものかと思っているんだよ』
確かに、その男性のことを見る目はとても冷めているような気がするけれど……そんなことをするような人には見えなかった。
『彼は私の子会社で働いている一人でね。けれど配属を変えようにも、そこでもちゃんと働かなかったら困るから、どうしたもんかと思っているんだ』
『……ちゃんと、じょうしの人がお仕事をおしえてあげたらいいんじゃないですか?』
『仕事自体はちゃんとできるんだよ。でも、他人に仕事をまわすような奴だから、どうしようかと思ってね』
『しちゃダメって言ったら?』
『何度も言ったけどダメなんだ。どうしたらいいと思う?』
『……だったら、お仕事いっぱいあげる?』
『え?』
『その人、お仕事はできるんでしょう? もしかしたら、みんながまわりにいると、手伝ってほしくなっちゃうのかもしれないから、一人だけ時間じゅらしたりして、たくさんお仕事あげたら、ちゃんとするんじゃないですか?』
『…………(過労、か。なるほど)』
そう言ってぽんぽんと、嬉しそうにまた、葵の頭を撫でた。
次に捻り取った花は…………
菊
の
花。



