すべてはあの花のために⑦


 ある日、育てていた花が、枯れました。


『ごめんなさいぃ~……』


 枯れてしまった花を見て、葵は大泣きをしていた。


『……お前のせいじゃないんだ』

『そうね? あおいちゃんのせいじゃなくてこの人のせいね?』

『……はんじゃいしゃ……』

『え。ちょっと待って。めっちゃ真顔で言われたら流石に傷付くわ~……』

『そうね犯罪者。あおいちゃんの一生懸命育てた花を枯らすなんて! 重罪に処す!』

『しょす!』

『おいおい。あおいめっちゃ元気じゃん。……いやな? 確かにオレが悪かった。種を蒔く時期が遅かったんだ』

『え……』

『あのお花の種はね? もっとあったかい時期に咲くお花なの』


 葵は一瞬ぽかん……とした。今は真冬だ。外にはうっすら雪が積もっている。


『……みーじゅーかーさーん!!』

『だ、だから悪かったって。……だからな? お前の育て方は一つも間違っちゃいないからな?? 気にするんじゃないぞ?』


 若干ビクビクしていたミズカは、きっと前に巴投げをしたことを引き摺っているに違いない。あれは自分でもよくできたと自画自賛している。


『(得意わじゃにしようかな? あ、でもやっぱり一本じぇおいの方がかっこいいから、それからまたあみだそう!)』


 すでにこんなことを考えていたりしている。今思えば末恐ろしいことこの上ない。


『だからね? またあったかくなったら、同じ種蒔いてあげましょう』

『はい! あったかくなるの待ちます!』

『でもあおい? 愛情、ちょっとはわかったんじゃないのか?』


 そう聞いてくるミズカに、葵はう~んと悩む。


『かわいいな、っておもうのもあいじょう?』

『ええそうね。……何を可愛いなって思ったの?』

『ことりさん!』

『おー。そうかそうか』

『ねこさん! わんこ!』

『わ、わんこね……』

『それから、小っちゃい子! とってもかわいかった!』

『ん? ……近所に小さい子はいたっけか?』

『いいえ? 多分あおいちゃんが一番小さいはずだけど……どこで小さい子に会ったの?』

『あじゃみさんのおしゃしんで見た子が、とってもかわいかったんです!』

『……あざみさん、何してるのかしら』

『あれじゃないのか? 同年代の子が近くにいないからと思って、写真でもと思って見せてあげてるんじゃ……』


 二人のアザミの見方が変わった瞬間。