すべてはあの花のために⑦


 帰ってきて早々、ミズカがそんなことを言ってきて、二人は目を丸くする。


『……おはな、ですか?』

『そうだ! じゃーん!!』


 そう言ってミズカが取り出したのは、野菜の種に比べたら大きめの、何かの花の種だった。


『この小さな種から、大きくてとっても綺麗な花が咲くんだ』

『たねからめが出ておおきくなって、すいぶん、えいよう、お日さまのおかげで、おはながさくんですよね?』

『ええそう。……でも、この種がなんのお花なのかわかるかしら?』

『……そこまでは知りません。すみません』


 謝ることなんてないのにと、二人は小さく笑う。


『あおい。この種が何の花なのか、知りたくないか?』

『知りたい。です……!』


 キラキラと、目を輝かせている葵を見て、二人は嬉しそうに笑った。


『よーし! それじゃあ早速植えに行くぞ~!!』

『おー!』

『えー?!』


 葵はミズカに担がれて、外の花壇へ連れてこられた。


『はい! それではまず? このあったかくて柔らかい土に植えてあげましょうっ!』

『え? えーっと。……こう?』

『あおい。そんなに奥深くまでやると芽が出ないから、大体1cmくらいの深さまでで大丈夫だ』

『……あおいちゃん。……花壇の底。見えてるからっ。………………ぷっ』

『え。……ひいのさん。わらわないで』


 だって知らないんだもの。説明不十分なのが悪い。 


『よし、植えたか~? その次は、毎日水をあげるんだ。外の洗い場のところにじょうろがあるから、それに水入れて持ってこーい』

『は、はーい』


 葵はてくてくと、外の洗い場まで駆けて行った。


『あなた……』

『ひのちゃんもあれ、あげたんだな』


 それは、決してヒイノのものではない。
 葵のためにと思って買ってきたものだ。でも、あれを見るとどうしても葵を思い出すので、大切なものに変わりはない。


『ええ。……あなたも、まさか花を育てさせるなんて』

『え? だ、だめだったか……?』

『いいえ。とっても素敵だと思っただけよ』

『……ひのちゃん』


 そしてラブラブなところに葵が、なみなみのじょうろを持って登場。


『み、……みじゅかさん。もって。きま、した……』

『おう! よく頑張ったな! ……だったら、この花壇のお世話をあおいに任せてみようかな』


 そう言ってミズカは、さっきの種を花壇にたくさん蒔いた。


『え? ……で、できる。かな……』

『大丈夫だ! それじゃああおい? お水をやるんだ!』


 そう言われた葵はじょうろを両手で抱え、ひっくり返そうとしたところで、ミズカに全力で止めに入られる。


『いやあおい! 使い方間違えてるから!』

『え? でも、お水あげればいいんですよね?』

『やり過ぎてもダメなんだ。腐ってしまうからな』

『え。……ど、どれくらい……?』