『大事にして? そしていつか、あおいちゃんに好きな人ができたら、わたしに返して欲しいの』
『え? ……す、すきな、ひと? ………………はい』
『え? 好きな人いるの?』
『ひいのさん。みじゅかさん』
そう言って嬉しそうに笑ってくれたけど、ヒイノはまたそれを葵に返す。
『ううん? 違う。そっちの好きじゃないの』
『……? すきって、いっぱいあるの……?』
『ええそう。たくさんあるの。でも、わたしが言う好きは、わたしがあの人に思っているものと同じもの。この人と、一生を添い遂げたいなと思う好きよ』
ヒイノは、小さく笑いながら、でもどこか愛おしげに葵を見つめてくる。
『……わかんない……』
『きっとそのうちわかる。……どうする~? あおいちゃんもストーカーに遭っちゃうかもよ~?』
「(……うん。まあ現に遭ったけどね。ヒイノさん大正解)」
『すとーかーとは、いっしょにいたくないです』
『えー? でもでも、あの人みたいに、実は見えないところで守ってた~とかだったら、ちょっと格好よくない??』
『……ふつうにそばにいてくれた方がいいな』
『わかってないな~。見えないから心にグッとくるのよ~』
「(……ほんと、今思えば3歳ぐらいの子に、何言ってるんだって思うわ……)」
でも、見えないからこそ格好いいのかと、そう思ったのは確かだ。
『ゆっくりでいいわ? いつか絶対にわかるもの。……あーあ。いつ返ってくるかな~』
『(え。……か、かえしてほしいならかえす。けど……)』
葵は首元……いや、胸のところで揺れるそれを、見つめていた。
『だからね? それまでずっと、大事に。壊さないように持っていて欲しいの』
『……なんで、ですか?』
そう言うと、ヒイノは少しだけ悲しそうな顔をした。
『あおいちゃんのここが、強くなるように』
そう言ってヒイノが触れたのは、葵の心。
『……ひいのさん。わたし、きょうきんついてなくて……』
『いや違うから、あおいちゃん……』
つんつんと、葵の心をヒイノが指す。
『別に、二色の色が入ってるだけで、このネックレス自体が色が変わるわけじゃないんだけど。ちょっと、ガラスの少女に似てるかな? って思って』
『??』
『……あおいちゃん、時々暴れちゃうでしょう? 今はちょっと落ち着いたね』
『……ごめんなさい』
『え? ううん。責めてるわけじゃないわ? 寧ろ吐き出してくれて嬉しいもの。……それで、あおいちゃんには二つ、色があるのかな? って思って』
『……ふたつの、いろ……?』
『そう! それで、あおいちゃんにはこれを大事にしてもらいたいの。ものを大切にする。……できる?』
『……わたしはできる、けど……』
そう言って葵は、もう一人の自分を思い出して俯いてしまう。
『大丈夫よ? もう一人の子にもちゃんと大事にしてって言うわ? あおいちゃんが大好きなわたしの大事なものだから、大事にしてね? って』
『……はい。だいじにする。こわしません。ちゃんと、ひいのさんにかえしますね?』
小さく笑いながら言う葵を、ヒイノがぎゅっと抱き締めた。
『(……気休めにしかならないかもしれないわ。でも、ものを大切にしたら、投げることはなくなるかもしれない。……取り敢えず、少しずつ様子を見ていきましょう)』
そうこうしていると、畑からミズカが帰ってきた。
『ただいま~。あおい? お前、花育ててみないか?』



