それからミズカには、武道を一通り習いながら、野菜の作り方に愛情を入れると、一段と美味しくなるんだと教えてもらった。
愛情がよくわからなかった葵だったけど、入れる時のミズカの顔が楽しそうな嬉しそうな顔だったので、葵もそんな顔をしながら魔法の呪文を唱えることにした。
ヒイノは、学校で習うようなことはちょっとしか教えなくなった。その代わり歌やピアノ、少しだけ絵を教えてくれたり、昔話を読んでくれたり。そして、たくさんの感情を教えてくれました。
そして葵が拾われて一年が経ち、二度目の秋を迎えようとしていた時――――。
『はい。これ、あおいちゃんに』
そう言ってヒイノがくれたのは、ガラスのハートのネックレス。
『わたしが前読んであげたお話、覚えてる?』
『……? いっぱいあるから、わかりません』
『えー。絶対わかるわ? ガラスの少女。覚えてるでしょう?』
『あ。……はい。とっても、かわいそうな……』
葵がそう言うと、ヒイノは小さく首を横に振る。
『あの話、あおいちゃんは悲しいって思っちゃったの?』
『え? ……だ、だって、いっしょに旅してた男の子たちが、かわいそう……』
『そっか。女の子視点で言ったわけじゃないのね』
『……?』
『確かに、悪戯な風さんのせいで、ガラスの女の子は壊れちゃったわ? 男の子たちも、寂しそうね』
『……はい。そうですね』
『でも、いつも一緒にいるわ』
『え?』
『お星様の川になって、いつでも彼らのそばにいてあげられるの』
『……でも、近くには、いないですよ』
『物理的な問題じゃないの。これは、気持ちの問題』
ヒイノはそう言って葵の首に、ネックレスを掛けてやった。
『たとえ近くにいなくても。いつも、気持ちは一緒なの』
『……ん~……』
『わからない?』
『……わから、ないです』
そんな葵に、ヒイノはすごくやさしい笑みを浮かべた。
『一番わかりやすく言うと、人って死んじゃうじゃない?』
『……!! い、いや』
『大丈夫よ? 落ち着いて?』
葵を抱き締め、ヒイノは一定のリズムでとんとんと撫でる。
『人って死んじゃったら、お星様になるの』
『え? ……て、てんせいのじゅんびとか、そんなのをするんじゃ……』
『よく知ってるわね。でも、それまでずっとお星様になってるの』
『……?』
『死んでしまって、悲しんでる人たちがいる。でも、その人たちの悲しみが落ち着くまでは、お空で見守ってるのよ?』
『……そう、なの……?』
『そう。……だから、遠くに行っちゃっても気持ちはずっと一緒にいるよって。このお話はそういってるの』
『……そっか。とってもきれいなおはなし』
『こういうちょっと悲しいお話はね、深く深く考えるといいお話だったりするの。だからわたしはお話を読むのも好きだし、自分で作ったりするのも好きなのよ』
『……はい! とってもすてき、ですね!』
葵が頷くと、大きくネックレスが揺れる。
『ひいのさん? これは?』
『はい! 今からあおいちゃんに、任務を与えます! にんにんっ』
『に、にんにん??』
何故かとっても楽しそうだった。そのままヒイノは高いテンションで続ける。
『このネックレスは、わたしの大事~なものです! これを、ガラスの少女のように壊してしまわないようにするには、どうしたらいいでしょうっ!』
『え? え?? こ、こわさない……。だ、だいじに、する……?』
『正解! ということで、あおいちゃんにこれを渡しておくわね』
『え? と、ということで?』
全く話が読めない。でも、やっぱりヒイノは楽しそうだ。



