『……わたし。おぼえてるんです。いままであったこと、ぜんぶ』
『『ぜんぶ?』』
『うまれてからいままで。ずっと。……あたまも。いろんなこと、しってます。いろんなことにも。気づきます……』
『すごいわね!』
『流石はオレの娘!』
『……おとうさんとおかあさんのなか、わるくなったの。わたしのせいなんです……』
『あおいちゃん……』
『どうしてそう思うんだ?』
『いっていいことと、いっちゃだめなこと、わからなくって。……おとうさん。おかあさんのおともだちとなかよくしてました。おかあさん。よる、おそとにでておさけのんで。たのしそうでした』
『『…………』』
『それ、いったらだめだったんです。いったからなか、わるくなって。……わたしの。せいで……っ』
『……あおいちゃんは、何も悪くないわ』
『ああ、そうだな』
『……っ、おしごとのじゃま、しないからって。おはなしもしないからって。わらわないからって。……そういっても。だめだったんです。わたしは。……うみに。すてられたんです……』
そう言うと、葵のことを二人が抱き締めてくれる。
『あおいちゃんは悪くないわ! わたしがご両親に直談判しに行ってくる! あおいちゃんはわたしたちの子供だからって!』
『ついでにぶっ飛ばしてくる! 安心しろ!』
『……もう、いいです』
俯いている葵を、覗き込むように二人は心配する。
『……いま。あったかいから。いいです』
『……あおいちゃん』
『あおい』
二人にまた、やさしく抱き締められた。
『……みょうじ。わすれてないです。だから。でも。いえない』
『うん。思い出すからでしょう?』
『そんな家忘れらればいいのにな。お前は花咲だ』
そう言ってくれる二人に、葵は首を振る。
『わたし。は。……あおいです。……こう。かくんです……』
ヒイノの手の平に、自分の漢字を書く。
『……みょうじ。おもいだすから。いえないんじゃないんです』
葵は、言って嫌われたら嫌だった。こんな感情、よくわからなかった。
『わたしの。……『かおをだしたおひさま』。『みょうじ』。とられてしまったんです』
『取られた? 誰に?』
『わたしのこと。……たすけてくれた『わたし』です』
『あおい……』
『あの、わたし。いやです。ひいのさん。くるしいから。……いろんなの。なげちゃう。こわい、です』
『(……よく、わからないけど……)』
『(……オレらにできることは……)』
二人は目を合わせて、葵に笑いかけてやる。
『だったらわたしたちが、なんとかしてあげるわ!』
『あおいが怖いと思ってる『あおい』を、やっつけてやろう!』
そんなこと、言ってくれると思わなかった。なんだか、嬉しかった。
『あおいちゃん? 一緒に治してあげるからね』
『ひいの、さん……』
『オレらにできないことなんてないんだからな! 安心しておけよ!』
『……。すとーかーさん……』
『いや、いいとこでそれ持ってくる??』
『ははっ。……はい。みじゅかさん!』
葵が笑いながらそう言うと、二人は嬉しそうに笑った。



