すべてはあの花のために⑦


『はたけは?』

『ひのちゃんばっかりに稼がせるわけにはいかないからな! オレも畑仕事で、たくさん美味しい野菜を作ってるんだ』

『……やさい、つくるんですか? かわない?』

『そうだぞ? ここで出てくる野菜は、大抵オレが作ってるもんだからな? 有難く食え』

『……ありがたく。食べる……』

『……野菜とかはな? 愛情込めて育ててやるんだ。その育てた人に、ありがとうって感謝する』

『かんしゃ……? あり、がとう……』

『肉とか魚とかは、生きてるものをオレらが殺して食べる』

『……!! こ、ろす……』

『でも、そんな魚たちにも、牛や鳥なんかにも、オレたちの体の一部になってくれてありがとうって感謝する。命を大事にいただくから、ご飯を食べる時は『いただきます』って言うんだ』

『……いただき。ます。……ごちそうさま……』

『ああ。有難くいただきました。だから『ごちそうさま』だ』

『……そっか』


 なんだかほっとしたような顔をしている葵を見て、二人も嬉しそうに笑っていた。
 それから、ヒイノの美味しいご飯を食べてごちそうさまをして、葵はぼうっとしていた。そんな葵の様子に、眠たいのかな? と、そんな会話を二人はしていた。

 でも突然葵が、手当たり次第ものを投げ始めたのだ。


『え? あ、あおいちゃん!?』

『どうしたんだあおい!』


 二人は声を掛けるが、葵には届かない。
 何かに取り憑かれたように目も据わっていて、自分のことすらわかっていないようだ。


『あ~あー……。あ~あー……』


 何を言っているのかは、わからなかった。ただ、ずっと涙を流していた。
 しばらくするとぱたりと動きを止め、葵はぱたりと倒れ、眠ってしまった。


『……あなた』

『……気持ち悪いって。このことなのか……?』


 ミズカは葵の小さな体を抱きかかえ、ヒイノは頭をやさしく撫でる。


『……何が、あったのかしら』

『……でもオレは、この子を拾った時から手放したくないって決めてた』


 今でも耳に声が、目に表情が焼き付いて離れない。


【生きたい!!】
【わたしの何が悪いんだ!!】
【どうしてわかってくれないんだ!!】


『それはわたしもよ? ……強く、してあげましょう? 心を』

『ああ。たくさん教えてやろう。たくさん愛情を注いでやろう。……強くしてやるよ。オレの、オレたちの大事な子供だ』


 二人は、葵のことを大事に育てることを誓い合ったのです。