『はたけは?』
『ひのちゃんばっかりに稼がせるわけにはいかないからな! オレも畑仕事で、たくさん美味しい野菜を作ってるんだ』
『……やさい、つくるんですか? かわない?』
『そうだぞ? ここで出てくる野菜は、大抵オレが作ってるもんだからな? 有難く食え』
『……ありがたく。食べる……』
『……野菜とかはな? 愛情込めて育ててやるんだ。その育てた人に、ありがとうって感謝する』
『かんしゃ……? あり、がとう……』
『肉とか魚とかは、生きてるものをオレらが殺して食べる』
『……!! こ、ろす……』
『でも、そんな魚たちにも、牛や鳥なんかにも、オレたちの体の一部になってくれてありがとうって感謝する。命を大事にいただくから、ご飯を食べる時は『いただきます』って言うんだ』
『……いただき。ます。……ごちそうさま……』
『ああ。有難くいただきました。だから『ごちそうさま』だ』
『……そっか』
なんだかほっとしたような顔をしている葵を見て、二人も嬉しそうに笑っていた。
それから、ヒイノの美味しいご飯を食べてごちそうさまをして、葵はぼうっとしていた。そんな葵の様子に、眠たいのかな? と、そんな会話を二人はしていた。
でも突然葵が、手当たり次第ものを投げ始めたのだ。
『え? あ、あおいちゃん!?』
『どうしたんだあおい!』
二人は声を掛けるが、葵には届かない。
何かに取り憑かれたように目も据わっていて、自分のことすらわかっていないようだ。
『あ~あー……。あ~あー……』
何を言っているのかは、わからなかった。ただ、ずっと涙を流していた。
しばらくするとぱたりと動きを止め、葵はぱたりと倒れ、眠ってしまった。
『……あなた』
『……気持ち悪いって。このことなのか……?』
ミズカは葵の小さな体を抱きかかえ、ヒイノは頭をやさしく撫でる。
『……何が、あったのかしら』
『……でもオレは、この子を拾った時から手放したくないって決めてた』
今でも耳に声が、目に表情が焼き付いて離れない。
【生きたい!!】
【わたしの何が悪いんだ!!】
【どうしてわかってくれないんだ!!】
『それはわたしもよ? ……強く、してあげましょう? 心を』
『ああ。たくさん教えてやろう。たくさん愛情を注いでやろう。……強くしてやるよ。オレの、オレたちの大事な子供だ』
二人は、葵のことを大事に育てることを誓い合ったのです。



