驚いて口を開けた瞬間、薬を押し込まれる。慌てて出そうとするけれど、レンが両手で口を塞いだ。
「っ、飲んで。あおいさん」
「っ、んんっ(離して……っ)」
押さえつけられている手を除けようと、葵はレンの手首を掴むけれど、彼の手は僅かに震えていた。
「飲んで。お願いだから……」
「……んんっ?(れん、くん……?)」
「信じて。絶対に起こします。オムライス食べてください。絶対。あとは……なんですか? ああ、連れて行ってあげます。絶対。帰ってこなきゃいけないけど。……でも今は、今だけはっ! あなたの望みをっ、オレが叶えてあげたいんです……!」
「……!! れ、れんく――んぅっ……」
レンは、ペットボトルの水を口に含み、葵のそれに押し当ててくる。しかし、口を開けないせいで、水は葵の口の中に入らず、顎へ首筋へと流れていくばかり。
レンは、悔しそうな表情を浮かべたあと、一度「すみません」と断りを入れ、葵の顎を思い切り掴んでこじ開けた。
「……!! んっ。んぅっ……」
もう一度口に水を含んだレンは、葵の開いた口へ、自分のそれを押しつけた。こくこくと、葵が嚥下をする音が聞こえてくる。
「……っ、はあ。はあ……」
「……のみ、ました……?」
レンは、返事も待たずにもう一度ペットボトルの中身を口に含む。
「……っ、え。れんく……。もう飲ん――……んっ」
葵が言い切る前に、また口を塞がれる。
どれぐらいそうされただろう。レンは、ペットボトルの水がなくなるまで、葵に口移しで、水を飲ませた。
「……っ。はあ。はあ。……っ。はあ……」
「……あおいさん」
「え。……っん……!」
もう水なんてないのに。レンは、自分のそれで、葵の唇を塞いだ。
押し返す力はない。息だって上手くつけなくて酸欠で。薬だって。効いてきている。それでもと、頑張って押し返そうとしても、葵の手はやさしく彼に絡め取られ、後ろのベッドへ縫い付けられた。
何度も角度を変えられて、葵の舌まで絡め取って、奥まで深く、繋がろうとしてくる。苦しくて。目の前が、涙で見えなくなる。
嫌われているはずなのに。殺したくてしょうがないはずなのに。彼の口づけから伝わってくるのは、『愛おしい気持ち』と『ごめんなさい』。
どうして、彼がそんな気持ちでいるのか、わからなかった。間違っているかもしれない。そんな気がするだけだから。



