すべてはあの花のために⑦


 そう言って指差すのはスノードロップ。


「わたしのこと考えて選んでくれたんだって思うと、すっごく嬉しい! 大事に育てるね! あれかな? スノーって言うくらいだから、寒いところで咲くんでしょ? ……冷蔵庫に入れたらいいかな」

「いいわけないでしょ! 早速枯らす気ですか!」


 そんなことを言い出す葵に、レンは息を荒らしながら突っ込む。


「え? じゃあ、どうすればいいかな?」

「ほ、本気だったんですね……」


 レンは肩を落とした。なんか疲れる、この人といると。


「……もう、あの花はもう長くないんですよ」

「え?」

「保って明後日まで。逆にこんなに長く咲いていること自体が珍しい花です」

「……そっか」

「だから、あなたにピッタリだと言ったんですよ。……精々涼しい、風が通るところに置いておいてあげたらいいんじゃないですか」

「え」

「水もあげてあげたらいいんじゃないですか? せめてその花だけでも、少しでも長く、咲かせてあげたらいいんじゃないですか。……たくさんの花を、枯らせたんでしょう?」

「……わ。わたしに。できる、かな……」

「さあ? そんなの知りません」

「……だよね」


 悲しそうな声で俯いてしまった葵に、レンは大きなため息をつき、ベッドに片膝をついてぐっと葵を引き寄せる。


「れ、れんくん……?」

「泣きますか?」

「え?」

「泣きそうな顔をされていたので、胸を貸してあげようかと」

「……ううん。大丈夫。ありがと、レンくん」


 初めは戸惑ったものの、やさしく抱き締めてくれるレンに、こてんと頭を預ける。


「……きっと、大丈夫ですよ」

「え……?」

「あなた次第で、まだ咲かせてくれると思いますよ。あの花も」

「……そう、かな」

「だから、あなたも無理はしないでください。どうするんですか、明後日までに消えてしまったら」

「……そう、だね」

「だから、ちゃんと規則正しい生活をしてください。まだ枯れたくないのなら」

「……やっぱりレンくんは、やさしいね」

「……ーーーーーですけどね」

「……?」

「いえ。なんでもありません。……この花も、変なことされたらさっさと枯れちゃいますよ」

「え。へ、変なこと……?」

「そうです。何勝手に冷蔵庫入れるんだって。怒ってすぐに枯れてしまうかもしれません」

「そ、そっか。……うん。変なこと、しない」

「……あなたも、変なことはしてあげないでください。自分の体を、最期まで労ってあげてくださいよ」

「……最期、か。どうなるのかな」

「そんなの知るわけないじゃないですか」

「あ。やっぱり?」

「はい」

「ありゃ、ハッキリ言うね……」


 二人して大きなため息をついた。