そう言って指差すのはスノードロップ。
「わたしのこと考えて選んでくれたんだって思うと、すっごく嬉しい! 大事に育てるね! あれかな? スノーって言うくらいだから、寒いところで咲くんでしょ? ……冷蔵庫に入れたらいいかな」
「いいわけないでしょ! 早速枯らす気ですか!」
そんなことを言い出す葵に、レンは息を荒らしながら突っ込む。
「え? じゃあ、どうすればいいかな?」
「ほ、本気だったんですね……」
レンは肩を落とした。なんか疲れる、この人といると。
「……もう、あの花はもう長くないんですよ」
「え?」
「保って明後日まで。逆にこんなに長く咲いていること自体が珍しい花です」
「……そっか」
「だから、あなたにピッタリだと言ったんですよ。……精々涼しい、風が通るところに置いておいてあげたらいいんじゃないですか」
「え」
「水もあげてあげたらいいんじゃないですか? せめてその花だけでも、少しでも長く、咲かせてあげたらいいんじゃないですか。……たくさんの花を、枯らせたんでしょう?」
「……わ。わたしに。できる、かな……」
「さあ? そんなの知りません」
「……だよね」
悲しそうな声で俯いてしまった葵に、レンは大きなため息をつき、ベッドに片膝をついてぐっと葵を引き寄せる。
「れ、れんくん……?」
「泣きますか?」
「え?」
「泣きそうな顔をされていたので、胸を貸してあげようかと」
「……ううん。大丈夫。ありがと、レンくん」
初めは戸惑ったものの、やさしく抱き締めてくれるレンに、こてんと頭を預ける。
「……きっと、大丈夫ですよ」
「え……?」
「あなた次第で、まだ咲かせてくれると思いますよ。あの花も」
「……そう、かな」
「だから、あなたも無理はしないでください。どうするんですか、明後日までに消えてしまったら」
「……そう、だね」
「だから、ちゃんと規則正しい生活をしてください。まだ枯れたくないのなら」
「……やっぱりレンくんは、やさしいね」
「……ーーーーーですけどね」
「……?」
「いえ。なんでもありません。……この花も、変なことされたらさっさと枯れちゃいますよ」
「え。へ、変なこと……?」
「そうです。何勝手に冷蔵庫入れるんだって。怒ってすぐに枯れてしまうかもしれません」
「そ、そっか。……うん。変なこと、しない」
「……あなたも、変なことはしてあげないでください。自分の体を、最期まで労ってあげてくださいよ」
「……最期、か。どうなるのかな」
「そんなの知るわけないじゃないですか」
「あ。やっぱり?」
「はい」
「ありゃ、ハッキリ言うね……」
二人して大きなため息をついた。



