今度はつんつんと、頬を突かれた。
「だから、聞いてやりたかったんだ、お前の本当の気持ち。吐いて欲しかったんだ。俺らに。……でも、それもやっぱり難しいんだな」
「……ごめんなさい」
「謝ることじゃない、こんなこと。……俺らじゃなくて、誰か吐ける人はいるのか?」
「うん。大丈夫。ありがとう。心配してくれて」
ツバサは悔しそうに足下を見つめ、もう片方の指先を強く握り込んでいた。
「……大丈夫だよ」
「え……?」
そんなツバサの手を、葵がやさしく包み込む。
「いつでも背中、押してあげるからね」
「……ん。ありがとな」
小さく笑って、ツバサはぽんと頭を撫でてくれた。
「そうそうそれでね、話は戻るんだけど。キサちゃんに『だったら難しくしちゃえばいいんだよ!』って教えてもらったの」
「は? どういうこと?」
目が点になったツバサに、葵は例のカードを取り出す。
「これは……何? 国旗?」
「それアキラくんも言ってたけど違うから」
ツバサは、そこに書かれた文字を一生懸命読んでいた。
「……ケンカ。仲直りできた? みんなと」
「ツバサくんと、……あと一人」
「ああ、あいつね」
流石はお兄ちゃん。よくわかってる。
「あいつは素直じゃないだけだから。気にすんなよ」
「うん。大丈夫。だって怒らせたのはわたしっていう事実は変わらないもの」
葵はこのカードについて話すことに。
「ここにね。わたしが言いたくないこと、書いてるの」
「……ふーん」
首を傾げる彼の顔には『俺こういうのあんま得意じゃねえんだよな』と書いてあった。
「わたしがあの時話せなかったのは、みんなにわたしのことを『知って欲しくなかった』からなんだ」
「(……ということは、アキのことは残酷な運命と、何か関係があるってことか)」
「でも、『わかって欲しい』んだ。わたしのこと」
「は? 知らないとわからないし」
「うん。そうなんだ。だから、こんなカードになったんだ」
そう言う葵に、ツバサはもう一度カードへ視線を落とす。
「これが、わたしが言いたくないけど言える限界なの。話せないけど、話せるギリギリなの。……だから、どうかわかって欲しいんだ」



