すべてはあの花のために⑥


「お前最近あれだ。マジ文章おかしいぞ。読者さんもビックリだ」

「したくてしてるわけでは……」

「しかもお前最近マジめんどくせえ」

「ええ……!?」


 めちゃくちゃ嫌そうな顔に、結構ショックだったりする。


「いつもの威勢はどうしたんだよ。人のことになるとズンズンドカドカ突っかかってくるってのに、自分のことになったら途端に臆病だなお前も」

「……チカくんに言われたくない」

「だから言っただろうが、お前もって。……そんなに嫌われんの、怖えのかよ」


 葵は小さくなって、こくりと頷いた。


「今、わたしはそれが一番怖い」

「……そっか」


 そう言うとチカゼは何故か嬉しそうに笑う。


「好きなもん、見つかってんじゃん」

「え?」


 にかっと、彼はお得意の笑顔を久し振りに見せてくれた。


「オレらのこと、大好きで仕方ないんだろ?」

「え。うん」

「え。あっさりだな」

「まあね。その通りだし」


 葵は立てた膝に顎を乗せる。


「もう、大切なものは失いたくないんだ」


 ぼそりと、そう呟いた葵の言葉に、チカゼは怪訝な顔をする。


「何か大切なもん、失ったのか」


 そう聞いてくるチカゼに、葵は苦笑いをした。


「……多分、失ったんだ」

「は? どういうことだよ」

「ハッキリわからないんだ」

「わけわかんねえ……」


「それと」と、葵は続ける。


「失うかも、しれないんだ」

「……何をだよ」

「大切なもの。……わたしにとって、かけがえのないもの」

「……だから、なんだってんだよ」


 言いたくなくて、膝に頭を埋めた。


「……はあ。わかった。聞かねえよ」


 ぽんぽんと、頭を叩いてくれる手がとってもやさしかった。


「チカくん。わたしね、『チカくんが考えてる生徒会メンバーじゃない』って、そう言ったでしょう?」

「…………」

「あの時、わたしがしたいって言ったからって、そう言ったよね」

「ああ」


 思い出したくないのか、少し機嫌が悪い。


「嘘をついていたわけじゃないんだけど、少し間違ってたみたい」

「はあ? それってどういう」


 葵は顔を上げて、チカゼに真っ直ぐに視線を合わす。


「君が考える生徒会メンバーのわたしも、いるってこと」

「……はあ!?」