すべてはあの花のために⑥


「にしてもあおいチャン。やっぱりこの間のこと、よくわかんなかったんだ」

「そうそう。冷静になって考えたんだけど、おれらやっぱりバカなのかな?」

「そんなわけないじゃないですか」


 真面目な顔して首を傾げる彼らは、それはそれはお持ち帰りしたいほど可愛かったけれど。


「でも、わたしが言った『結婚のこと』や『わたしがアキラくんを好き』だということに嘘がないのだけは、わかって欲しいんです」

「あおいチャン……」

「うん。あーちゃんは嘘つかないって、おれら信じてるから!」


 自信たっぷりに、今度はそう言ってくれて、気持ちが温かくなる。


「あんな言い方をしてごめんなさい。でも、一番ハッキリあの時は言ったんです」

「なのにわからないおれら……」

「どうしよう、あかね。おれら病院行った方がいいのかな。『テストはできるはずなのに、日常会話に支障があるんです』って」

「そ、それは重傷だけど、わたしの言い方の問題だと思うので……」


 葵は、例のカードを二人にも渡した。


「これは?」

「わたしが伝えられるギリギリの方法です」

「何が書いてあるの?」


 オウリは開いてみて文章を読んでいるけど、そこら中に疑問符を飛ばしていた。


「……『わたし』のことが、書いてあります」

「「――!!」」


 二人はもう一度必死にカードを見るけど、やっぱり首を傾げていて。……持って帰りたかった。


「本当は、知って欲しくないんです。わたしのこと」

「あーちゃん……」

「でも、それじゃダメなんだって気がついたんです。わたしは知って欲しくはないけど、みんなにはわかって欲しいんです」

「あおいチャン?」


 ふっと笑って、葵は立ち上がる。


「きっとわかってくれるって信じてます。またこんな、わけがわからない方法で言ってきて……って、そう思われても仕方がありません。でも、これもあの時と同様真実です。わかっても、心の中に留めておいてください。二人が信じているように、わたしもみんなのこと、二人のこと、ちゃんと信じてます」


 葵は扉の方へと歩き出す。


「っ、あーちゃん! やっぱりあっくん好きなの?!」

「……そうですね」

「あおいチャン……」


 扉まで行って振り返った葵は、仮面を脱ぎ捨てていた。


「さっき、カナデくんに言われたんですけど、カナデくんの言葉を借りるなら、『完全には好きになっていない』に近いかもしれません」

「「――!!」」

「……。……だってわたしは好きがわからないんです。アキラくんを友達として好きなわたしは、そういうことですよ?」


 ふわりと笑って、葵は次の場所へと向かった。