「にしてもあおいチャン。やっぱりこの間のこと、よくわかんなかったんだ」
「そうそう。冷静になって考えたんだけど、おれらやっぱりバカなのかな?」
「そんなわけないじゃないですか」
真面目な顔して首を傾げる彼らは、それはそれはお持ち帰りしたいほど可愛かったけれど。
「でも、わたしが言った『結婚のこと』や『わたしがアキラくんを好き』だということに嘘がないのだけは、わかって欲しいんです」
「あおいチャン……」
「うん。あーちゃんは嘘つかないって、おれら信じてるから!」
自信たっぷりに、今度はそう言ってくれて、気持ちが温かくなる。
「あんな言い方をしてごめんなさい。でも、一番ハッキリあの時は言ったんです」
「なのにわからないおれら……」
「どうしよう、あかね。おれら病院行った方がいいのかな。『テストはできるはずなのに、日常会話に支障があるんです』って」
「そ、それは重傷だけど、わたしの言い方の問題だと思うので……」
葵は、例のカードを二人にも渡した。
「これは?」
「わたしが伝えられるギリギリの方法です」
「何が書いてあるの?」
オウリは開いてみて文章を読んでいるけど、そこら中に疑問符を飛ばしていた。
「……『わたし』のことが、書いてあります」
「「――!!」」
二人はもう一度必死にカードを見るけど、やっぱり首を傾げていて。……持って帰りたかった。
「本当は、知って欲しくないんです。わたしのこと」
「あーちゃん……」
「でも、それじゃダメなんだって気がついたんです。わたしは知って欲しくはないけど、みんなにはわかって欲しいんです」
「あおいチャン?」
ふっと笑って、葵は立ち上がる。
「きっとわかってくれるって信じてます。またこんな、わけがわからない方法で言ってきて……って、そう思われても仕方がありません。でも、これもあの時と同様真実です。わかっても、心の中に留めておいてください。二人が信じているように、わたしもみんなのこと、二人のこと、ちゃんと信じてます」
葵は扉の方へと歩き出す。
「っ、あーちゃん! やっぱりあっくん好きなの?!」
「……そうですね」
「あおいチャン……」
扉まで行って振り返った葵は、仮面を脱ぎ捨てていた。
「さっき、カナデくんに言われたんですけど、カナデくんの言葉を借りるなら、『完全には好きになっていない』に近いかもしれません」
「「――!!」」
「……。……だってわたしは好きがわからないんです。アキラくんを友達として好きなわたしは、そういうことですよ?」
ふわりと笑って、葵は次の場所へと向かった。



