すべてはあの花のために⑥


 時刻は6時半。途中でユズとは別れ、葵とキサは登校には異常に早すぎるくらいの時間に、学校へと到着した。


「いやー。ついにきたね、あっちゃん」

「そう、ですね。キサちゃん……」


 寒さからか緊張からか、それとも武者震いからかはわからなかったが、少し体が震えていた。


「カードは準備万端?」

「うん。……キサちゃん。これ」


 そう言って葵はキサに、青と橙色のリボンが結ばれているチョコとカードを渡した。


「ありがとう。……別に、謝る必要なんてないから、これはこれでもらっておくよ」

「え?」

「だってあっちゃん悪いこと一つもしてないんだから。だから、変わりにこれと、あとこれを結んであげるね?」


 キサがそう言ってくれたチョコには、橙と紺色のリボン。それから左手首に結んでくれたのは、緑色。


「そんなにわたし、不健康に見えるかな」

「ううん。確かにそんな意味もあるけど、これには別の意味もあるの」

「え?」

「『安心してください』って意味。緑自体が落ち着く色だからだと思うんだけど、『大丈夫だからね』ってこと」

「……うん」

「あっちゃん。きっと今日のこともだけど、これからのことも、上手くいくから。だから、安心して?」

「うん! ありがとう、キサちゃん」


 そうして二人は、静かすぎる学校内へと足を踏み入れたのだが……。


 まさか今日が葵にとって最悪な日になるなんて、一体誰が予想できただろうか。