時刻は6時半。途中でユズとは別れ、葵とキサは登校には異常に早すぎるくらいの時間に、学校へと到着した。
「いやー。ついにきたね、あっちゃん」
「そう、ですね。キサちゃん……」
寒さからか緊張からか、それとも武者震いからかはわからなかったが、少し体が震えていた。
「カードは準備万端?」
「うん。……キサちゃん。これ」
そう言って葵はキサに、青と橙色のリボンが結ばれているチョコとカードを渡した。
「ありがとう。……別に、謝る必要なんてないから、これはこれでもらっておくよ」
「え?」
「だってあっちゃん悪いこと一つもしてないんだから。だから、変わりにこれと、あとこれを結んであげるね?」
キサがそう言ってくれたチョコには、橙と紺色のリボン。それから左手首に結んでくれたのは、緑色。
「そんなにわたし、不健康に見えるかな」
「ううん。確かにそんな意味もあるけど、これには別の意味もあるの」
「え?」
「『安心してください』って意味。緑自体が落ち着く色だからだと思うんだけど、『大丈夫だからね』ってこと」
「……うん」
「あっちゃん。きっと今日のこともだけど、これからのことも、上手くいくから。だから、安心して?」
「うん! ありがとう、キサちゃん」
そうして二人は、静かすぎる学校内へと足を踏み入れたのだが……。
まさか今日が葵にとって最悪な日になるなんて、一体誰が予想できただろうか。



