すべてはあの花のために⑥


「……葵ちゃん。助けるわ。あたしも、必ず」


 アカリがそう言うと、客間の扉がそっと開いた。


「葵ちゃん。大丈夫かな……」


 そこには、別のところに泊まっていたはずのサツキがいた。


「わからないわ。……でも、何かあった時、あたしは家を使うから」

「君がそれでいいなら俺は君を支えるさ」


 そう言ってサツキはアカリの肩を抱き、子供たちが出て行った玄関の扉を見つめていた。



「ユズちゃん。これ、よかったら」

「わー! すっごく美味しそうだったから楽しみだったんだあー!」

「あたしからも!」

「あ。……よかった。あたしは水色じゃなくて」


 葵は橙色のリボンを掛けたチョコを、キサは紺色のリボンを掛けたチョコをユズに渡した。特別返事はいらなかったんだけど、ユズは自分が持っていた橙色のリボンが付いたチョコと、あるリボンを葵の左手に巻いてくれた。


「……紺と銀……?」

「うん! ……あおいちゃん、あたしと賭けしない?」

「賭け??」

「どっちが恋に早く落ちるのか! 負けた方がデザートバイキング奢り!」


 にっこり笑うユズが次の約束をしてくれて嬉しかった葵は、満面の笑みで返した。


「あは! ……じゃあ頑張って勝たなきゃ。勝負だユズちゃん!」

「…………」

「(……? 柚子? どうしたの?)」

「(やっぱりあたし、あおいちゃんならいけるわ)」

「(やめておきなさい……)」


 そんな会話をしているなんて、葵は知らないけどね。