深夜2時。目が覚めたユズは、お手洗いに行ったあと、冷えた体をさすりながらまた布団に入る。うつらうつらしていると、誰かが起き上がって机に向かった。
「(ん~……? あおい。ちゃん……?)」
ふらふらと、陽炎のように歩くその姿は、少しだけ不気味だった。
電気は点けず、スマホの画面を使って何かを読んでいるようだ。
それからしばらくして、その葵らしき人影は、布団に戻ってきたのだが……。
「(……今の。本当にあおいちゃん……?)」
葵のような人影から見えた瞳は、赤く光っているような気がした。
――――――…………
――――……
バレンタイン当日。時刻は5時。
どうやら今日一日はずっと自習になっているらしく、HRもないらしい。
始業チャイムと同時にリボン作戦はスタートされるらしいが、如何せん終業までは長すぎる。生徒会メンバーは、この日は朝早くに学校へ潜伏し、一日バレないように過ごすそう。かくれんぼのロングバージョンだ。
なので朝早くに起きて、アカリのおいし~い朝食を戴いたあと葵たちは支度をしていた。
キサは部屋で着替えを先にしている。ユズは歯磨きをして、葵は顔を洗ったあと、コンタクトを入れていた。
「あおいちゃんって目、悪いんだっけ?」
「あ。えっと、実は最近ちょっと視力が悪くなって……」
そう言って葵は、慣れたようにコンタクトを着けた。
「ん? どうかしましたかユズちゃん」
「……ううん? 綺麗な黒い瞳だなあ~って思っただけだよ」
ユズは着替えに部屋へと戻ったが、そのあと葵は鏡でしばらく自分の瞳を見つめていた。



