「(あれだけ書いたら、わたしが二重人格ってわかるかもしれないけど……)」
それが、葵にとって時間がないことと気づいたかどうかはわからない。普通に考えたら、それとは結びつかないだろうけれど。
「(それでもアキラくんは、変わらずにいてくれた)」
きっと、みんなもそうだと思う。でも、やっぱりどうしても怖いんだ。
「(知って欲しくないけど、でも、ちゃんとわかってもらわないといけないんだ)」
大丈夫。きっとみんななら解けるはず。アキラに伝えたものを、ちょっと言い方を難しくしただけだ。
わかってもらえたらあとは、みんなを信じるだけだ。
「(信じろ。みんなを。きっとわかってくれる。わたしのこと。ちゃんと気づいてくれる。理解してくれる……)」
あとはただ信じる。それだけ。
葵が開示できる限界。アキラは今回ばかりは特別だったけれど。その限界にどうか気がついて欲しい。そしてわかって欲しい。
ぎゅっと葵は胸の前で手を組んで、そう願っていた。
そんな葵の心の奥を知ってか知らずか、ユズもキサも、小さく笑っていた。
それから風呂を上がると、アカリが電話をしていた。相手はどうやらサツキ。深く深く反省しているようで、スピーカーにしてないのに、めちゃくちゃ大きな声が葵たちの耳にもしっかり届いている。
なんだかんだでラブラブらしいけれど、今日は葵たちがいるからということで、明日なら帰ってきてもいいと許可をもらったみたいだ。
そのあともアカリお手製のとっても美味しい夕食を食べ、三人でキサの部屋に集まっていた。そこでは女子特有の恋バナが始まり、家事が終わってアカリも途中から参加した。
「あ! アカリさん、ビデオ見たんです! アヤメさんから戴いて!!」
あの、トーマ以上に格好よかったアカリの姿。
「あらやだ! そうなの~? 恥ずかしいわー」
ドスの効いた声で、マイクも反響するほど堂々と大声出していらっしゃったじゃないですか……とは、とてもじゃないが口には出せなかったけれど。
ユズはよくわからなかったみたいだけど、トーマのことは知ってたみたいなので、丁寧にあの時のことを話してあげた。



