すべてはあの花のために⑥


 それからなんとか全てにリボンを掛け終える頃にはもう夕方に。夕食を作っておくからと、アカリが言ってくれたので、三人は一緒にお風呂へ。


「柚子の方はなんかバレンタインとか特にしないの?」

「あっちは全然ないよ~。こっちが異常だと思うわ。レベルも高いしね」

「レベル?」

「男のレベルってことだよあっちゃん」

「あたしは女のレベルも高いと思うよ。あたしあっちじゃモッテモテだもん!」

「すごい! 流石ですね、ユズちゃん!」

「冗談真に受けちゃった……」

「あっちゃんはそういう子だからね」


 交代交代で体を洗っている。


「あおいちゃんはさ、どんな人がタイプ?」

「タイプですか?」

「あっちゃんが、この人となら一緒にいたいなとか、そんな感じでいいんだよ」

「一緒にいたい……」


 そういえば前、カナデにこんなことを言った。あれがもしかして自分のタイプなのだろうか。


「……理解者、かな」


 ぽろりと、口に出てしまった。


「前に、カナデくんにはその、お断りするのに話したんだけど……」


 すっかり仮面が剥がれ落ちてしまっているが、葵本人は、どうやら気がついていないようだった。


「わたしの隣に立ってくれる人は、わたしの一番の理解者であって欲しいの」

「理解者って……?」

「わたしのこと、ちゃんと全て理解してくれて。……それでも、わたしと一緒にいたいって言ってくれる人」

「あっちゃん……」

「わたしにとって、この人がいないと生きていけないような。……そんな人が、わたしはいい」


 葵がそう言うと、二人は黙り込んでしまった。


「あ、れ? おかしかった? 重い……?」

「ううん。……絶対に、現れるなと思っただけ」

「え?」

「うん! あっちゃん? 大丈夫だ。きっと、あっちゃんのことちゃんと全部わかってくれて、それでいてそんなあっちゃんがいいっていう人が、絶対に現れると思うから」


 嬉しそうに笑いながら、二人がそう言ってくれる。


「そ、そう。かな……?」

「うん。あたしが保証する」

「あたしも~。あっちゃんは、心の準備をしておけばいいと思うよ?」

「え??」

「あとはカラダだね」

「でも多分、待ってるだけじゃダメなんだ」