それからなんとか全てにリボンを掛け終える頃にはもう夕方に。夕食を作っておくからと、アカリが言ってくれたので、三人は一緒にお風呂へ。
「柚子の方はなんかバレンタインとか特にしないの?」
「あっちは全然ないよ~。こっちが異常だと思うわ。レベルも高いしね」
「レベル?」
「男のレベルってことだよあっちゃん」
「あたしは女のレベルも高いと思うよ。あたしあっちじゃモッテモテだもん!」
「すごい! 流石ですね、ユズちゃん!」
「冗談真に受けちゃった……」
「あっちゃんはそういう子だからね」
交代交代で体を洗っている。
「あおいちゃんはさ、どんな人がタイプ?」
「タイプですか?」
「あっちゃんが、この人となら一緒にいたいなとか、そんな感じでいいんだよ」
「一緒にいたい……」
そういえば前、カナデにこんなことを言った。あれがもしかして自分のタイプなのだろうか。
「……理解者、かな」
ぽろりと、口に出てしまった。
「前に、カナデくんにはその、お断りするのに話したんだけど……」
すっかり仮面が剥がれ落ちてしまっているが、葵本人は、どうやら気がついていないようだった。
「わたしの隣に立ってくれる人は、わたしの一番の理解者であって欲しいの」
「理解者って……?」
「わたしのこと、ちゃんと全て理解してくれて。……それでも、わたしと一緒にいたいって言ってくれる人」
「あっちゃん……」
「わたしにとって、この人がいないと生きていけないような。……そんな人が、わたしはいい」
葵がそう言うと、二人は黙り込んでしまった。
「あ、れ? おかしかった? 重い……?」
「ううん。……絶対に、現れるなと思っただけ」
「え?」
「うん! あっちゃん? 大丈夫だ。きっと、あっちゃんのことちゃんと全部わかってくれて、それでいてそんなあっちゃんがいいっていう人が、絶対に現れると思うから」
嬉しそうに笑いながら、二人がそう言ってくれる。
「そ、そう。かな……?」
「うん。あたしが保証する」
「あたしも~。あっちゃんは、心の準備をしておけばいいと思うよ?」
「え??」
「あとはカラダだね」
「でも多分、待ってるだけじゃダメなんだ」



