すべてはあの花のために⑥


 時刻はお昼過ぎ。アカリがとってもおいしい昼食を作ってくれたので、先に腹拵えにした。


「あっちゃん、今日のことお家の人なんて?」

「ああ、今日は生徒会の方の家で明日の準備をするのでって伝えました」

「確かに明日の準備だねえ~」


 きっとキサは気がついたのだろう。葵がわざと『生徒会の方』と言ったことに。
 でも話さないということは理由があるんだと思ったんだろう。苦笑いをしただけで、それ以上問うてくることはなかった。


「ユズちゃんのご家族の方はなんと仰っていましたか?」

「え? うん! 連絡は入れたけど、家にはいないからねー。ちゃんと戸締まりするように言われちゃった。もう小さい子供扱いいつまでもするんだから」


 ユズは、ぐびぐび……と、まるでビールかのように麦茶を飲んでいた。


「ご家族の方は、お仕事が遅くまであるんですか?」

「え? うん。お父さんもお母さんも、元々仕事で多忙だから、あんまり家にいることってないんだ~。特にお父さんは全然家に帰ってこないんだよねー。何の仕事してるのか教えてくれなかったんだけど、忙しいんだろうね。だから少し一人暮らし気分かな?」

「で、でも、お一人だといろいろ大変ですよね? 防犯とかは大丈夫ですか?」

「うん! もうばっちりだよ! ここまでいらないでしょって言うくらいセキュリティー万全のとこだし、めちゃくちゃ部屋広いから、今すごい快適!」

「そ、そうですか」

「さあみんな? 盛り上がるのもいいけど、今日のメインは女子会よ~」


 違います。一応チョコを作りに来ました。


「クソヘタレお父さん帰ってこないから、女だけで楽しみましょうねー!!」


 あ。やっぱり怒ってるみたい。

 そのあとたくさん話をしながら美味しくご飯をいただき、早速チョコ作りに取り掛かる。
 ちなみに葵は、トリュフをみんなに作りたいと思います。キサはガトーショコラを焼いて、カットしたものをみんなにあげるそうで、キクにはティラミスを別個で作るそうです。ユズは特にあげる特定の人はまだいないみたいだけど、折角だからとみんなの分を作るのだそう。ちなみに作るのはチョコバー。


「キサちゃん、愛がこもってますねー」

「――!!」

「ほんとほんとー。きっと喜んでくれるよ、朝倉先生~」

「あ。ユズちゃんもご存じだったんですね」

「何となくそうかなあーって思って」

「キクちゃんはね~。毎年キサのチョコはちゃんと食べるのよー?」

「ちょ!? お母さん……!!」


 なんとまあ微笑ましい。