すべてはあの花のために⑥


「キサちゃん。リボンはどうしましょう」


 キサの部屋に荷物を置かせてもらっていると、「もう買ってきてあるよ~。材料もー」と返しが。


「ええ!? そうなんですか?! ……それは。申し訳なかったです」

「ううん! 気にしないでいいよー? お母さんがめちゃくちゃ張り切って用意しちゃっただけだからー」


 なんだかその様子が目に浮かぶようで、とても微笑ましかった。


「それなら……ありがとうございます。いいものが作れるといいですね」

「うん! 楽しみだね~」


 キサも本当に楽しそうで何よりだ。


「ユズちゃんはいつ頃来られるんですか?」

「多分もうすぐ来るんじゃないかな。足りないものちょっと来るついでにお願いしたんだ~」

「え? それならわたしが行ったのに……」

「あっちゃんに行かせたら来られるか不安だから」


 きっと、クリスマスのデートのとこでバレたんだろう。
(※正解)
 それじゃあ、ユズが来るまで……。


「キサちゃん。サツキさんと何があったんですか?」

「あー。あったのはあたしじゃないんだー……」


 ということはアカリの方か。


「喧嘩ですか」

「そうそう。頑張って作ったご飯をお父さんが『いらない』とか言ったから、怒っちゃってー」

「それはそれは。怒らせてはいけない人を怒らせてしまったんですね……」

「そうなの。でもあたしも怒ってるから、今日は帰って来んなって言っちゃった」


 味方のいないキサ父サツキ。きっと今日はキクのところにでも泊まるのだろう。
 そうこうしているうちに、チャイムが鳴った。葵とキサは目を合わせ、急いで玄関まで走って出迎えに行く。


「お届け物だぞお~い!」

「柚子ー!」

「ユズちゃん!! お久し振りです!!」


 ちょびっとだけ仮面がズレちゃったけどしょうがない。だって彼女は葵の10人目のお友達なのだから。


「むむむー! あおいちゃん! 敬語に戻ってる!!」

「すみません。ちょっとわけがありまして。今回はこのままで……」


 葵がそう言うと、何故か「……そうか。わけか……」と言ってみんな納得してくれた。あまりにも早く納得してくれるので、葵の方が少し戸惑ってしまうほど。