「キサちゃん。リボンはどうしましょう」
キサの部屋に荷物を置かせてもらっていると、「もう買ってきてあるよ~。材料もー」と返しが。
「ええ!? そうなんですか?! ……それは。申し訳なかったです」
「ううん! 気にしないでいいよー? お母さんがめちゃくちゃ張り切って用意しちゃっただけだからー」
なんだかその様子が目に浮かぶようで、とても微笑ましかった。
「それなら……ありがとうございます。いいものが作れるといいですね」
「うん! 楽しみだね~」
キサも本当に楽しそうで何よりだ。
「ユズちゃんはいつ頃来られるんですか?」
「多分もうすぐ来るんじゃないかな。足りないものちょっと来るついでにお願いしたんだ~」
「え? それならわたしが行ったのに……」
「あっちゃんに行かせたら来られるか不安だから」
きっと、クリスマスのデートのとこでバレたんだろう。
(※正解)
それじゃあ、ユズが来るまで……。
「キサちゃん。サツキさんと何があったんですか?」
「あー。あったのはあたしじゃないんだー……」
ということはアカリの方か。
「喧嘩ですか」
「そうそう。頑張って作ったご飯をお父さんが『いらない』とか言ったから、怒っちゃってー」
「それはそれは。怒らせてはいけない人を怒らせてしまったんですね……」
「そうなの。でもあたしも怒ってるから、今日は帰って来んなって言っちゃった」
味方のいないキサ父サツキ。きっと今日はキクのところにでも泊まるのだろう。
そうこうしているうちに、チャイムが鳴った。葵とキサは目を合わせ、急いで玄関まで走って出迎えに行く。
「お届け物だぞお~い!」
「柚子ー!」
「ユズちゃん!! お久し振りです!!」
ちょびっとだけ仮面がズレちゃったけどしょうがない。だって彼女は葵の10人目のお友達なのだから。
「むむむー! あおいちゃん! 敬語に戻ってる!!」
「すみません。ちょっとわけがありまして。今回はこのままで……」
葵がそう言うと、何故か「……そうか。わけか……」と言ってみんな納得してくれた。あまりにも早く納得してくれるので、葵の方が少し戸惑ってしまうほど。



