「……あの。先生も……その、理事長から願いって言われました?」
「……も? 他にも誰かいるの?」
「あ、はい。わたしの今の担任の先生です」
「あらそうなのー」
「もしよろしければ、先生はわたしをどこまで理事長に教えていただいたのか、聞いてもいいですか?」
「いいわよ? それと願いも言った方がいいかしら?」
「そうしていただけると、吐き易くなるので助かります」
コズエは小さく笑って話してくれたが、キクと全く一緒のことだった。
「あなたのことで知ってるのはここまでね。……あ。あとさっき教えてくれたこともかな?」
「ほ、本当に理事長ってそういう言い回ししてるんですね……」
別にキクを疑ってたわけじゃないけど。
「(上手に、話せるところを話すんだな……)」
彼を見習って、もうちょっとカードの構想を練り直そうか。
「それから願いも、多分その方と一緒だと思うけど……」
そういうコズエが言ったのも、またもや一緒だった。
「あと、このことは内緒にするようにって感じかな?」
絶対キクも言われてたはずなのに、葵にそれを言わなかったのは、絶対にトーマにチクったからだろうさ。
「あ」
「ん?」
彼を見習わなくても、いい人が目の前にいるじゃないか!
「先生!」
「は、はい?!」
葵はコズエの手を握り締め、キラキラした瞳で頼み込んだ。
「暗号! 一緒に考えてください!」
「ええっ!?」
それからというもの、コズエは葵の納得がいくまで知恵を搾り取られ、頭はもうスッカスカで体はヘトヘトになっていた。その代わり、葵はコズエの精気を吸い取ったかのように、つるんっとした顔になっていたけれど。
「ありがとうございました先生! これなら絶対みんなわからない!」
「い、いや、わかってもらわないといけないんじゃないの……?」
「それも矛盾ですね」
「……あおいちゃん。またいらっしゃい? あなたならいつでも大歓迎だから」
コズエは葵の手をぎゅっと握ってくれた。
「はい! ありがとうございます先生!」
もうあっという間に17時を回っていたので葵はこれでお暇した。
「結果。楽しみにしてるわね?」
「ははっ。はい! それじゃあまた!」
そう言って葵は、コズエにわかるところまでの地図を書いてもらって帰って行った。



