すべてはあの花のために⑥


「……あの。先生も……その、理事長から願いって言われました?」

「……も? 他にも誰かいるの?」

「あ、はい。わたしの今の担任の先生です」

「あらそうなのー」

「もしよろしければ、先生はわたしをどこまで理事長に教えていただいたのか、聞いてもいいですか?」

「いいわよ? それと願いも言った方がいいかしら?」

「そうしていただけると、吐き易くなるので助かります」


 コズエは小さく笑って話してくれたが、キクと全く一緒のことだった。


「あなたのことで知ってるのはここまでね。……あ。あとさっき教えてくれたこともかな?」

「ほ、本当に理事長ってそういう言い回ししてるんですね……」


 別にキクを疑ってたわけじゃないけど。


「(上手に、話せるところを話すんだな……)」


 彼を見習って、もうちょっとカードの構想を練り直そうか。


「それから願いも、多分その方と一緒だと思うけど……」


 そういうコズエが言ったのも、またもや一緒だった。


「あと、このことは内緒にするようにって感じかな?」


 絶対キクも言われてたはずなのに、葵にそれを言わなかったのは、絶対にトーマにチクったからだろうさ。


「あ」

「ん?」


 彼を見習わなくても、いい人が目の前にいるじゃないか! 


「先生!」

「は、はい?!」


 葵はコズエの手を握り締め、キラキラした瞳で頼み込んだ。


「暗号! 一緒に考えてください!」

「ええっ!?」


 それからというもの、コズエは葵の納得がいくまで知恵を搾り取られ、頭はもうスッカスカで体はヘトヘトになっていた。その代わり、葵はコズエの精気を吸い取ったかのように、つるんっとした顔になっていたけれど。


「ありがとうございました先生! これなら絶対みんなわからない!」

「い、いや、わかってもらわないといけないんじゃないの……?」

「それも矛盾ですね」

「……あおいちゃん。またいらっしゃい? あなたならいつでも大歓迎だから」


 コズエは葵の手をぎゅっと握ってくれた。


「はい! ありがとうございます先生!」


 もうあっという間に17時を回っていたので葵はこれでお暇した。


「結果。楽しみにしてるわね?」

「ははっ。はい! それじゃあまた!」


 そう言って葵は、コズエにわかるところまでの地図を書いてもらって帰って行った。