すべてはあの花のために⑥


 断られたらどうしようと、最後は尻窄みになる。


「その答えも右手ね。私は左手には結んであげないわ」

「……そう、ですか」


 コズエは、葵の両手を包み込んでくる。


「何でかっていうと、もうあおいちゃんの味方だからよ?」

「……え?」


 そんなわけがない。だって彼女は『願い』に入っていなかったし、助けることなんて……。……でき、なかった。


「そ、そんなわけありません!」

「いいえ? あなたが圭撫くんを、みんなを前に進ませてくれたこと。私はとても感謝してるの」

「でも、先生にお礼を言ってもらえるようなことなんて」

「今言ったでしょう。みんなを進ませてくれてありがとうって。……教師の私ができなかったことを、あなたがしてくれて本当によかった」


 やさしい顔で、そんなことを言われるようなこと、していないというのに。


「でも……そうね。じゃあ、もし私がこのカードを解読できたら、あおいちゃんに何かしてもらうっていうのはどう? それだったら、あなたは納得してくれるかしら」

「……え? な、何かって……?」

「ふふ。何してもらおうかしらね~?」

「え? あ、あの……。先生?」


 コズエは一人楽しそうだ。


「そうだ!」

「? 決まったんですか?」


 先生がある提案をしてきたので、葵は目を見開いた。


「……ど、うして。そんなこと……」

「あら? そう言うってことはやっぱりそうなのね?」

「――!」


 どうやら鎌を掛けられたようだ。


「どう? これは言えないことかしら」

「……いえ。それだけでしたら、大丈夫です」

「だったら頑張っちゃおうかしらねー」


 そう言って先生は眼鏡を取り出し、葵のカードを真剣に見つめ始める。
 結構上手にできたんじゃないかなと葵は思っていたのだけれど、急にコズエに抱き締められた。


「……え。せ、せんせ……?」

「そう。……いつでも、捌け口になってあげるわ」


 そう言うってことは、このカードに込められている葵の気持ちまでも、きちんと読み取ったってことだ。


「かっ、簡単、でした……?」

「いいえ? これは本当に難しいわ。全然わからなかったもの」

「でも、先生はあっという間に」

「こういうの、よく作ったり解いてたりしてたのよ」

「え……」

「だから、その意地があったからね~? お手上げしそうになったけど、……わかってよかったわ」


 まさかの得意分野だったとは。予想外だ。


「あおいちゃん? 賭けは私の勝ちよ?」

「あ。はい。それじゃあ――……」


 そして葵は、コズエに負けてしまったので、あることを教えてあげた。