断られたらどうしようと、最後は尻窄みになる。
「その答えも右手ね。私は左手には結んであげないわ」
「……そう、ですか」
コズエは、葵の両手を包み込んでくる。
「何でかっていうと、もうあおいちゃんの味方だからよ?」
「……え?」
そんなわけがない。だって彼女は『願い』に入っていなかったし、助けることなんて……。……でき、なかった。
「そ、そんなわけありません!」
「いいえ? あなたが圭撫くんを、みんなを前に進ませてくれたこと。私はとても感謝してるの」
「でも、先生にお礼を言ってもらえるようなことなんて」
「今言ったでしょう。みんなを進ませてくれてありがとうって。……教師の私ができなかったことを、あなたがしてくれて本当によかった」
やさしい顔で、そんなことを言われるようなこと、していないというのに。
「でも……そうね。じゃあ、もし私がこのカードを解読できたら、あおいちゃんに何かしてもらうっていうのはどう? それだったら、あなたは納得してくれるかしら」
「……え? な、何かって……?」
「ふふ。何してもらおうかしらね~?」
「え? あ、あの……。先生?」
コズエは一人楽しそうだ。
「そうだ!」
「? 決まったんですか?」
先生がある提案をしてきたので、葵は目を見開いた。
「……ど、うして。そんなこと……」
「あら? そう言うってことはやっぱりそうなのね?」
「――!」
どうやら鎌を掛けられたようだ。
「どう? これは言えないことかしら」
「……いえ。それだけでしたら、大丈夫です」
「だったら頑張っちゃおうかしらねー」
そう言って先生は眼鏡を取り出し、葵のカードを真剣に見つめ始める。
結構上手にできたんじゃないかなと葵は思っていたのだけれど、急にコズエに抱き締められた。
「……え。せ、せんせ……?」
「そう。……いつでも、捌け口になってあげるわ」
そう言うってことは、このカードに込められている葵の気持ちまでも、きちんと読み取ったってことだ。
「かっ、簡単、でした……?」
「いいえ? これは本当に難しいわ。全然わからなかったもの」
「でも、先生はあっという間に」
「こういうの、よく作ったり解いてたりしてたのよ」
「え……」
「だから、その意地があったからね~? お手上げしそうになったけど、……わかってよかったわ」
まさかの得意分野だったとは。予想外だ。
「あおいちゃん? 賭けは私の勝ちよ?」
「あ。はい。それじゃあ――……」
そして葵は、コズエに負けてしまったので、あることを教えてあげた。



