早朝。
外はまだ真っ暗だ。今朝は特によく冷える。
ある物影は、ある場所へと目指して歩いていた。
「……ふふっ」
小さな笑いとともに、目的の場所へ着いた物影は、静かに扉を開ける。
扉を開けると、そこにはとても綺麗な人が眠っていた。
気配に気がついたのか、眠っていた人はゆっくりと目を開ける。
「……え。な、んで……」
「? ……ふふ」
その物影に驚いた様子で、一気に目が覚めたようだ。
「だ、だってまだ――」
「…………」
「答えて! なんで……っ」
「…………ふっ」
「――っ!? ……っ、くっそお……」
物影は、悔しそうに枕に顔をつけるその綺麗な人の頭を撫でようとしたが、強く手を叩かれた。
「触るなっ!」
「…………ふふ」
その人からぽろぽろと、零れる涙を拭わず、物影は嬉しそうに笑いながらその人の耳に付いているものに触れた。
「よく似合ってる。あの子が選んだだけのことはあるわね?」
「――……!」
ふっと耳元で呟いたあと、物影はその部屋から去って行った。
「……っ。な。んでっ……」
たくさん泣いた。もう。これでもかというほど。もう、流れないと思うくらい泣いた。
「なんでこんなに。……まだ。出てくるんだっ……」
ぽつぽつと。涙で枕が濡れていった。



