びしっ！ と腕を高らかに突き上げるキサを、葵は眩しそうに見ていた。
「……絶対、か」
「うん。……あっちゃん。それはあいつらも一緒だからね？」
「でも、つらそうな顔させちゃった。……怒らせちゃった」
「それだけあっちゃんが大切だからだよ。あっちゃんが苦しそうな、悲しそうな目をしてるのに、何でもないようにそう言ってるから、みんなはそうなっちゃったの」
「で、でも。最初から友達じゃないって」
「そんなこと、思ってるわけないじゃん」
「で、でも。拒絶。されて……っ」
「つい感情的になっただけだから。逆に滅多に見ないよあんな日向。……それだけあっちゃんのこと、心配だったってことだよ？ あれだったら聞いてみるといいよ。まあ素直には言わないだろうけどー」
いや、絶対にそう思ってたとしても口を割らないか、弟2号は。
「つ、つばさくんに。叩かれちゃっ……」
「うんうん。きっと今頃、あいつも自分の手を見つめながらやっちゃったって思ってるよー」
「アカネくんも。オウリくんも。……あんな顔。させたくなんて。なかったんだっ……」
「大丈夫だよ。あいつらもついイラッときちゃっただけだし。寧ろあいつらがあっちゃんに謝るべきだよ」
「ん……？ なんで……？」
「あっちゃんが隠してたこともだけど、秋蘭がずっと好きだったって知って、ちょっとヤキモチ妬いたんだと思うよ？」
「…………」
「圭撫も一緒。でもあっちゃんの言ってることがわからないのもあるだろうけど、結局のところヤキモチだから」
「……ち、ちかくん。話しかけんなって。気分。悪いって……っ」
「そこ！ あっちゃんたちの話がわからなかったんだよ！ 何？ オレの考えてる生徒会メンバー』って」
「……？ 前、キサちゃんとトーマさんの結婚の話をチカくんに相談されたことがあって……」
「え。相談してたのあいつ」
「うん。それはいいんだけど、あのお披露目会のネクタイのジンクスのこと。生徒会メンバーが何で自分たちは奪いに行かないのかなって、話したんだ」
「（全然よくないけど。……まあ心配掛けちゃってたからね。もう一回ちゃんとお礼言っとこ）」
「チカくんが。考えたのは、生徒会メンバーに選ばれるような人には、もう望んでもない相手がいたんじゃないかって。……そう、言ってたんだ」
「チカ……」
キサ自身のことを、チカゼは遠回しに伝えたのだろう。
「だから、わたしが結局のところそうじゃないかって。……さっきはそう言われたの」
「最初から届かないっていうのは？」
「そ、それは。……わたしからは言えない、ごめん」
成る程ね。ということは、それ以上言えないならやっぱり答えは一つだ。
