すべてはあの花のために⑥


「聞きたいことはそれだけ? だったら早くこの縄解いて欲しいんだけど。解かないなら自力で」

「それじゃあオレから聞こうかな。みんなそれどころじゃないみたいだし」


 ショックが大ききかったのか、みんなは視線を下げていたけれど、一番怖い人はスマホのカメラをこちらへと向けたままにこりと笑う。


「(ど、どうしよう。勝てるかな。何なら本当に自力で抜け出して逃げる選択肢もアリだけど……)」


 悪魔さんには一度負けてるので、思わず身構えた。


「罪人に問います」

「(違うけど)……なんですか」

「まず、あなたの罪がなんなのか、あなたは理解してますか」

「え? ……アキラくんとの結婚を隠してたこと?」


 葵がそう言うと、ヒナタは「違う」とはっきり告げた。


「えっと……?」

「あんたのせいで、みんな笑わなくなったんだけど」


 まさかの発言に、みんなは俯いていた顔を上げた。


「あんたの罪は、オレの仲間から笑顔を奪ったこと」

「え。……あなたそんなこと言うキャラだっけ?」

「悪いけど本気でキレそうだから。それ以上なんか言ったら絞め殺すよ」

「ひいっ……!」


 ヒナタの目は、本気だった。


「……ひなチャン」

「ぶっちゃけて言うと、みんなにもキレてるから」


 感動する間もなく、矛先はみんなの方へ。


「アキくん。明けまして全然おめでたくないんだけど」

「……すまん」

「ほんと、ちゃんと聞けって言ってるじゃん。なのに、聞かずになんで一人で勝手にショック受けてるの」

「……だって。ショックだったんだもん」

「だもんじゃない。みんなもみんなだし。ちゃんとこいつから全部聞いたわけじゃないのに勝手に落ち込んでさ。それって自分の解釈じゃん。ちゃんとこいつに聞きなよ」


 図星を言われたみんなは、今度は黙り込んでしまった。


「ということですが、わかりましたか」

「それは。……本当に罪人だね」


 みんなの笑顔を奪うなんて。ほんと、最低だ。


「それでは質疑応答を再開します。質問には迅速且つハッキリ答えるように」

「善処します」


 答えたら、ピコッという音がした。そしてヒナタはスマホをテーブルの上に置く。


「腕だっる。ほんと、最初の絶対いらなかったし」


 ど、どうやら撮影をやめたみたい。