「はあ。はあ」
葵が、ぺたんと扉の前に座り込む。
「…………っ。ごめん。なさいっ」
ぽろぽろと。涙が零れていくを、そっと拭う。それに驚いて、弾かれるように顔が上がった。
「いや、オレいるし」
ヒナタは座り込んだ葵を立たせようと腕を掴むけれど、葵は首を振るだけ。
「はあ。……何? 今度はどうして泣いてるの?」
ヒナタは、葵の横にしゃがんで覗き込む。
「ツバサに告白されたから? 何がごめん? 教えて? 言いたくない?」
ゆっくりと、顔が上がってくる。涙でいっぱいの瞳が、不安そうに揺れていた。
「教えて?」
やさしい声で、そっと促す。
「……いっぱい。あるの」
「ん? 何が?」
言いながら、零れていく涙を丁寧に拭ってあげる。
「好きって。思いが。強くって……」
「……怖かった?」
「どうしても。わたしは幸せにしてあげられないから……」
「……ツバサが好きなの?」
「すき」
ぴくりと、拭う手が止まる。
「……わたしは。みんなが。すき」
「アキくんは?」
「……ちょっと。ちがう」
「恋愛として好き?」
「……好き。恋愛も。お友達としても」
「ツバサは?」
「おともだち」
「はあ……」
ヒナタは大きな息を吐いて完全に座り込み、片腕で顔を少し隠していた。
「……もう一個。ごめんなさい。あるの」
「また日本語喋れてないよ」
「……でも。言いたくなくて。ごめんなさいも。あるの」
「……ごめんなさいばっかだね」
「わたし。が。最低。で。……ごめんなさい」
「え?」
「罰当たりでっ。ごめんな。さいぃぃぃぃー……っ」
「え。ちょ」
ボロボロと泣き出した葵の背中を、慌てて摩る。
何があったんだあの間にと、泣かしたツバサを脳内でもう一度打っ叩いておいた。



