アキラは怒りました。言葉にはしませんが、態度には存分に表して。
「葵、不十分だ」
「何言ってるんだ、アキラくん。イエスかノー以外でちゃんと答えたんだ。十分すぎるよ」
葵は「ですよね~」と、扉の方へと視線を向ける。
「秋蘭長~い。帰るよー」
「え。父さん。いつからいたんだ」
「アキラくんがやっと質問し始めた頃ですよねー」
そこまでバレていると思っていなかったのか、父は驚いている様子だった。
「だって振り返ったらちょっと扉が開いてるんですもん。最初は誰かと思ったけど、恐らくシランさんじゃないかと思ったんですよ」
「(……全然気がつかなかったんだが)」
一体葵は、どこまで見えてるんだ。
「まあ秋蘭。今日はもう遅いからお暇させてもらおう」
「……でも、父さん」
「十分葵ちゃんは話してくれたじゃないか」
「え?」
アキラは父と葵の顔を交互に見る。二人は「ですよねー」「そうそうー」と話しているだけだ。
「……あ、あれのどこが十分」
「一旦俺は、葵ちゃんが言ったことを頭の中で整理してみてもいいんじゃないかと思うよ?」
「整理するも何も」
「葵ちゃんは、話したくなくても。話せなくても。ギリギリのところを、謝ってくれたお前に伝えたはずだ」
「(確かに、俺が謝ったから。隠してたことをきちんと話したから、葵は仮面を外してくれた)」
――もし、それを言ってなかったらどうなっていた……?
「え。シランさん。そこからいたんですか?」
「いや、内容は知らないけど謝ってたのを見ただけ」
怖くなったので、考えるのはすぐにやめた▼
「……わかった。一旦持ち帰りまーす」
「え? アキラくんだよね?」
「よし。流石俺の息子ー」



