すべてはあの花のために⑥


「ほ、ほんと……?」

「ばーか。んなことで嫌うかよ」

「ちかくん……」

「……ありがとな。話してくれて」


 にかっと、チカゼが笑いかけてくれる。


「……なんでこんなことで嫌うと思ったの?」

「あかねくん……」

「あーちゃんのこと、捨てるなんて最低!」

「おうりくん……」

「アオイちゃんのこと大好きなのに、今更嫌いになれって言われても無理だよー」

「……カナデクン」

「え。何で俺だけ棒読み?」

「さっきあなた何したんだっけ」

「ごめんごめん(ま、また攻めるけどね~)」


 謝る気持ちが一つも伝わってこなかったので、その後土下座してきてもしばらくの間は許さなかった。


「葵。つらかったらいつでも迎えに行ってやる」

「え。それって違う意味で言ったよね多分」

「………………チッ」

「(え。アキラくんのキャラが暴走してるんだけど……)」

「葵? 茜も言ってたけど、何で嫌うなんてこと、思ったんだよ」

「おかまく、……つばさくん」

「いや雰囲気ぶち壊し」

「ひょめん」


 昨日からほっぺたを引っ張られすぎて、そのうち落っこちてしまうかもしれない。


「……わたしのこと。ちょっとおかしいなって、思ったこと、ない……?」

「ある」(※×8人)

「え。なんでひなたくんまで……」

「あんた聞き方悪いから。あんたいっつもおかしいから。アホだから。バカだから」

「っ、ひなたぐんがいじめるぅ~……」

「あー。はいはい違うって。どこか『異常だな』って思うことはなかったかって聞きたかったんでしょ? 異常に頭が切れたり、異常に記憶力がよかったり、異常に強かったり、異常に勘がよかったり」


 ヒナタがフォローしてそう言ってくれると、「まあ、それはあるけど……」とみんなは口にする。


「……それ。子供の頃からなの。産まれてすぐからおかしくって。やっと歩けるようになった頃は、いろんな国の言葉が話せたし、お父さんの仕事の間違いとか、……直してあげてた」


 葵の異常さに、みんなの言葉が出なくなる。


「捨てられたのは、わたしが普通は言っちゃいけないことを、言っちゃったから。常識は。……その頃はなかったから」

「言っちゃいけないことって……?」

「お父さんが、浮気してたこととか。お母さんが夜遊びしてたこととか。仲が良かった二人を。……わたしのせいでそんな風にさせちゃったんだ」