「ほ、ほんと……?」
「ばーか。んなことで嫌うかよ」
「ちかくん……」
「……ありがとな。話してくれて」
にかっと、チカゼが笑いかけてくれる。
「……なんでこんなことで嫌うと思ったの?」
「あかねくん……」
「あーちゃんのこと、捨てるなんて最低!」
「おうりくん……」
「アオイちゃんのこと大好きなのに、今更嫌いになれって言われても無理だよー」
「……カナデクン」
「え。何で俺だけ棒読み?」
「さっきあなた何したんだっけ」
「ごめんごめん(ま、また攻めるけどね~)」
謝る気持ちが一つも伝わってこなかったので、その後土下座してきてもしばらくの間は許さなかった。
「葵。つらかったらいつでも迎えに行ってやる」
「え。それって違う意味で言ったよね多分」
「………………チッ」
「(え。アキラくんのキャラが暴走してるんだけど……)」
「葵? 茜も言ってたけど、何で嫌うなんてこと、思ったんだよ」
「おかまく、……つばさくん」
「いや雰囲気ぶち壊し」
「ひょめん」
昨日からほっぺたを引っ張られすぎて、そのうち落っこちてしまうかもしれない。
「……わたしのこと。ちょっとおかしいなって、思ったこと、ない……?」
「ある」(※×8人)
「え。なんでひなたくんまで……」
「あんた聞き方悪いから。あんたいっつもおかしいから。アホだから。バカだから」
「っ、ひなたぐんがいじめるぅ~……」
「あー。はいはい違うって。どこか『異常だな』って思うことはなかったかって聞きたかったんでしょ? 異常に頭が切れたり、異常に記憶力がよかったり、異常に強かったり、異常に勘がよかったり」
ヒナタがフォローしてそう言ってくれると、「まあ、それはあるけど……」とみんなは口にする。
「……それ。子供の頃からなの。産まれてすぐからおかしくって。やっと歩けるようになった頃は、いろんな国の言葉が話せたし、お父さんの仕事の間違いとか、……直してあげてた」
葵の異常さに、みんなの言葉が出なくなる。
「捨てられたのは、わたしが普通は言っちゃいけないことを、言っちゃったから。常識は。……その頃はなかったから」
「言っちゃいけないことって……?」
「お父さんが、浮気してたこととか。お母さんが夜遊びしてたこととか。仲が良かった二人を。……わたしのせいでそんな風にさせちゃったんだ」



