「俺は、お前のことを高校になるまで知らなかった。でも俺が七つの時の誕生日パーティーに来てたんだよな? 俺は覚えてないけど」
にっこり笑ってくれる葵は、それを使わずに答えてくれている。
「……断ってきた、らしいんだ」
「…………」
「葵? お前は何度縁談を持ちかけてきて、何度断ってきたか知ってるんだろう? それにいつ、それを父さんが承諾したのかも」
「……使う?」
「いや、多分答えはイエスだろうから使わない」
「そっか」
「だが、ここで二つ使う」
「はい??」
「だから一回だけ、イエスかノー以外で答えてくれ」
「それってどういう」
「父さんが断った理由。それと承諾した理由を、お前は知ってるだろうから教えて欲しい」
その後すぐ、「あ、あと、いつ承諾したのかも教えてくれ」と滑り込む。葵が『もう一つ聞くことあるでしょうが』って顔をしたから。
「二つじゃダメだな。三つだ。それなら答えてあげる」
葵は、部屋の扉の方へと一瞬視線を流した。
「……わかった。今日はそれで勘弁してやる」
「いやわたしが主導権持ってるからね。アキラくんたどたどじゃん」
「もう最初の質問してからパニックになったからしょうがない」
「あ。そうですか……」
「だから三つ使うから、教えて欲しい」
真っ直ぐに見つめると、葵はにっこり笑った。
「まず、シランさんが縁談を断った理由は……」
「(ごくり)」
「道明寺だから」
「え」
「シランさんが縁談を承諾した理由も道明寺だから」
「え」
「いつ承諾したのかは……」
「…………(ごくり)」
こればかりは逃げられないだろうと、アキラは身構えた。
「桜が散って少し経ったくらい、かな」



