すべてはあの花のために⑥


「じゃあ。それを、叶えてあげようって、言われたの」

「? 続き、話してくれるの……?」

「……家のために、なることをしなさいって」

「でもそれってさ、プレゼントでも何でもないじゃん」

「それでも、『わたし』はしたの」

「何を?」

「……っ。言いたく、ない……っ」


 今までで一番つらそうだ。声も、表情も。


「(……これが一番、オレらに嫌われると思ってることか)」


【彼女が、アキラとの結婚をお願いする代わりにしたこと】

 それが葵にとって一番、嫌われると思っていることなのだろう。


「……うん。聞かないよ。だからそんな顔しないで?」


 ほっぺを包み込んでそう言うけど、彼女の目からは綺麗な涙が、ころんころんと落ちてゆく。


「……。っ、ひっくっ……」

「……綺麗だね」

「……。っ、え……?」

「オレ、あんたの涙好きなんだよね」


 そっと、指の背で涙を丁寧に拭う。


「泣いてる顔好きだから。だから泣かせようと思ったし」

「……どえす。だね……」

「一種の愛情表現でしょ?」

「はは。……そっかあ。ひなた様々だね?」

「(……うん。絶対わかってない)」


「はあー……」と、ヒナタが大きなため息をついているのに、葵はキョトンとしている。


「続きね。……アキくんから聞いた。振られたんだって」

「っ。ええ……!?」

「それしか聞いてないよ? ただ、もし結婚したとしてもあんたの気持ちがないと意味ないから攻め続けてやるって言ってた」

「……それ、だけ……?」

「え? 他になんか言ったの?」

「……。アキラくんは。婚約者候補さんだから……」

「よくわかんないけど、それはもう聞かない方がいい?」

「……うん。ごめんなさい」


 別に謝らなくていいのにと思っていたら、葵が続きを話してくれた。


「ずっと。断られて。きたの」

「……アキくんのお父さん?」

「……ん。そう」

「断られても諦めなかったんだ」

「……うん。家のためのこと。したの」

「それが、あんたは嫌だったんだよね」

「……っ、いや。だったっ……」

「そっかそっか。まだしてるの? そんなこと」

「……。失敗。しっちゃってから。はっ。……して。ない」

「失敗?」

「ん。ありがとう……っ」

「は? 何いきなり」

「うぅぅ~……。ありがとう~……っ」

「……どう、いたしまして?」