時刻は1時を回った頃。
「……どうする? そろそろ寝る?」
「……寝ない」
少し縋り付くように、彼女が抱きついてくる。
「でも今日は学校でしょ? 最後の卒業式のリハしなきゃなんないでしょ?」
「……うん」
ヒナタは、葵を手懐ける能力を習得した▼
「オレまだ風呂入ってないから汚いよ」
でも、なんだか自分に必死にしがみついてくるので、思わず心配になる。
「……ん。起きてるから。いなくなんないから」
「……うん」
「じゃあ、お話する?」
「……うん。お話、する」
むぎゅ、と。胸に顔をくっつけて来ながら言ったので、最後の方はこもっていてよく聞こえなかったけれど。
「甘えん坊だね」
「……そんなこと、ないもん」
「そんなにくっつかなくても、オレどこも行かないよ?」
「……うれし、かったの」
「ん?」
「……きらわれ、なかったから……」
「今、実感中なの」と、スリスリしてくる。
「(……はあ。ほんと、人の気も知らないで)」
それでもしたいならいくらでもさせてあげるけど。
ぽんぽんと、ヒナタは葵の頭を撫でてあげた。
「修学旅行の時、ちょっと話してくれたじゃん。なんか昔話的な、あんたがお日様取られた話」
「……うん。した」
「それがさっきの話?」
「……ん。そう」
むぎゅ、っと。また抱きついてこられる。
「そのこと、詳しく話せる?」
「……もう、さっき言ったからいや」
「そっか。さっきのがギリギリ?」
「……カード」
「え?」
「カードに、……ヒナタくんに言ったお話、繋がること、あるよ?」
「そうなんだ。今持って来てもいい?」
「いや。行かないで」
すぐに帰って来るのにと思っていても、葵が離れないので動けない。
「じゃあ、この間の話もう一回して?」
「ん……?」
「オレが怒っちゃった時の話。ちゃんと聞いてなかったから」
「……い、や」
「なんで? もう怒んないよ? 嫌いになんてなんないよ?」
「……き、聞かないで、くれる……?」
「言えなかったら、言いたくなかったらそう言っていいよ?」
「……じゃあ。もう一回、言う」



