すべてはあの花のために⑥


 時刻は1時を回った頃。


「……どうする? そろそろ寝る?」

「……寝ない」


 少し縋り付くように、彼女が抱きついてくる。


「でも今日は学校でしょ? 最後の卒業式のリハしなきゃなんないでしょ?」

「……うん」


 ヒナタは、葵を手懐ける能力を習得した▼


「オレまだ風呂入ってないから汚いよ」


 でも、なんだか自分に必死にしがみついてくるので、思わず心配になる。


「……ん。起きてるから。いなくなんないから」

「……うん」

「じゃあ、お話する?」

「……うん。お話、する」


 むぎゅ、と。胸に顔をくっつけて来ながら言ったので、最後の方はこもっていてよく聞こえなかったけれど。


「甘えん坊だね」

「……そんなこと、ないもん」

「そんなにくっつかなくても、オレどこも行かないよ?」

「……うれし、かったの」

「ん?」

「……きらわれ、なかったから……」


「今、実感中なの」と、スリスリしてくる。


「(……はあ。ほんと、人の気も知らないで)」


 それでもしたいならいくらでもさせてあげるけど。
 ぽんぽんと、ヒナタは葵の頭を撫でてあげた。


「修学旅行の時、ちょっと話してくれたじゃん。なんか昔話的な、あんたがお日様取られた話」

「……うん。した」

「それがさっきの話?」

「……ん。そう」


 むぎゅ、っと。また抱きついてこられる。


「そのこと、詳しく話せる?」

「……もう、さっき言ったからいや」

「そっか。さっきのがギリギリ?」

「……カード」

「え?」

「カードに、……ヒナタくんに言ったお話、繋がること、あるよ?」

「そうなんだ。今持って来てもいい?」

「いや。行かないで」


 すぐに帰って来るのにと思っていても、葵が離れないので動けない。


「じゃあ、この間の話もう一回して?」

「ん……?」

「オレが怒っちゃった時の話。ちゃんと聞いてなかったから」

「……い、や」

「なんで? もう怒んないよ? 嫌いになんてなんないよ?」

「……き、聞かないで、くれる……?」

「言えなかったら、言いたくなかったらそう言っていいよ?」

「……じゃあ。もう一回、言う」