「ほら。嫌いになんてならないでしょ?」
「……うん。そうだね」
「今の話は? 全部話したの?」
「……ううん。まだ三つぐらい。言ってない」
「それは言えない?」
「……一個は。ちょっとだけ。みんなに伝えたの」
「え。オレは?」
「だってひなたくん。チョコ受け取ってくれなかっ」
「美味しかったよ」
「へ……?」
「大事に戴きました。ありがとう」
「え。え……?」
「もしかしてあのカードのこと? 国旗みたいな」
「え? えっと……」
「答えなさい」
「い、いひゃいれひゅ……!」
ほっぺをびろ~んと引っ張られる。
「それがわかったらもう一つも話せるの?」
「ぜ。全部は。絶対に話せないの。それが契約だから」
「……そう。それなら全部は話せなくても言えるんだね?」
「……言いたく、ないけどね」
「こら。またネガティブ。どこ行ったの、さっきまでの強気は」
「トイレに流してきた」
「そ、そう……」
でも、ここまで言えたんだ。
「みんなに言おう? オレも自分のこと、母さんのことみんなにちゃんと言うから」
「……!」
ヒナタの提案に、葵は体を硬直させてしまう。
「いやだ? オレには言えたのに?」
「だ、だって……」
「ん? だって……何?」
「……? あれ。なんでだろ。主、だから……?」
ヒナタはガクッと肩を落とす。
「あのね、みんなに言わなかったのはまあ心配掛けたくないってのもあった。知られたくないってのもあったけど、オレがみんなに嫌われると思ったからだよ」
「ええ!? そ、そんなこと絶対ないよ……!」
「うん。そうだね。でも、それはあんたもだから」
「え……?」
「嫌うわけないじゃん。寧ろみんな、もっとあんたのこと好きになるよ。やっと教えてくれたって。心開いてくれたって。……オレも嬉しかった。あんたの口から、そうやって聞けたこと」
ヒナタは葵のほっぺに自分のそれをくっつけて、彼女の耳元でやさしく囁く。
「オレも。……あんたのこと、もっと好きになった」
「……!!」
頬だけで十分。体温が一気に上がったのは見なくてもわかった。
「オレと一緒に自分のこと話そうよ。それで、みんなにちゃんとわかってもらおう? ……怖いよね。オレも怖い。嫌われたら嫌だね。オレも嫌だ。でも大丈夫。みんなはそんなことないよ。でも大丈夫。そうなってもオレがいるから。……だから、オレと一緒に、前に進もう?」
音は立てない。葵にだって気づかせないように、こめかみにそっと口づけを落とす。
「……。うん。一緒に。がんばる。……そばに。いてね……」
「(当たり前だし。もう、嫌って言われても放してなんかやらないよ)」
小さく震える彼女が愛おしくて、思い切り力を入れて抱き締めた。



