すべてはあの花のために⑥


「ほら。嫌いになんてならないでしょ?」

「……うん。そうだね」

「今の話は? 全部話したの?」

「……ううん。まだ三つぐらい。言ってない」

「それは言えない?」

「……一個は。ちょっとだけ。みんなに伝えたの」

「え。オレは?」

「だってひなたくん。チョコ受け取ってくれなかっ」

「美味しかったよ」

「へ……?」

「大事に戴きました。ありがとう」

「え。え……?」

「もしかしてあのカードのこと? 国旗みたいな」

「え? えっと……」

「答えなさい」

「い、いひゃいれひゅ……!」


 ほっぺをびろ~んと引っ張られる。


「それがわかったらもう一つも話せるの?」

「ぜ。全部は。絶対に話せないの。それが契約だから」

「……そう。それなら全部は話せなくても言えるんだね?」

「……言いたく、ないけどね」

「こら。またネガティブ。どこ行ったの、さっきまでの強気は」

「トイレに流してきた」

「そ、そう……」


 でも、ここまで言えたんだ。


「みんなに言おう? オレも自分のこと、母さんのことみんなにちゃんと言うから」

「……!」


 ヒナタの提案に、葵は体を硬直させてしまう。


「いやだ? オレには言えたのに?」

「だ、だって……」

「ん? だって……何?」

「……? あれ。なんでだろ。主、だから……?」


 ヒナタはガクッと肩を落とす。


「あのね、みんなに言わなかったのはまあ心配掛けたくないってのもあった。知られたくないってのもあったけど、オレがみんなに嫌われると思ったからだよ」

「ええ!? そ、そんなこと絶対ないよ……!」

「うん。そうだね。でも、それはあんたもだから」

「え……?」

「嫌うわけないじゃん。寧ろみんな、もっとあんたのこと好きになるよ。やっと教えてくれたって。心開いてくれたって。……オレも嬉しかった。あんたの口から、そうやって聞けたこと」


 ヒナタは葵のほっぺに自分のそれをくっつけて、彼女の耳元でやさしく囁く。


「オレも。……あんたのこと、もっと好きになった」

「……!!」


 頬だけで十分。体温が一気に上がったのは見なくてもわかった。


「オレと一緒に自分のこと話そうよ。それで、みんなにちゃんとわかってもらおう? ……怖いよね。オレも怖い。嫌われたら嫌だね。オレも嫌だ。でも大丈夫。みんなはそんなことないよ。でも大丈夫。そうなってもオレがいるから。……だから、オレと一緒に、前に進もう?」


 音は立てない。葵にだって気づかせないように、こめかみにそっと口づけを落とす。


「……。うん。一緒に。がんばる。……そばに。いてね……」

「(当たり前だし。もう、嫌って言われても放してなんかやらないよ)」


 小さく震える彼女が愛おしくて、思い切り力を入れて抱き締めた。