すべてはあの花のために⑥


「もう。ここまでしか。言いたくないっ……」

「……ん。そっか」


 泣いている葵を、ヒナタは思い切り抱き締めてやる。


「よく頑張りました」

「……っ。ひっく……」

「大きな一歩。大前進じゃん」

「ううぅ~……」

「ていうか、今の話のどこに嫌う要素があるのかわからないんだけど」

「……っ。えっ!? だ、だって気持ち悪いでしょう……?」

「どこが?」

「や。やっと歩けるぐらいのこどもが。お父さんの仕事。間違い直したりとか……」

「え。すご。そんなことできたの。羨ましいんだけど」

「い。いろんな国の言葉とか話してっ。もう。大学で習うようなこととか。知ってるんだよ……? 一言一句、全く間違えずに覚えられるんだよ? 気持ち、悪いでしょっ……?」

「全然? 寧ろその頭交換して欲しい」

「な、んでっ……。っ、実の親に気持ち悪がられて、嫌いになられてっ。捨てられるんだよ……? 今のお父様たちから。お金としか見られてないんだよ?」

「何? あんた嫌って欲しいの?」

「それは。い、いやだけど……」

「ほんと最低。マジ嫌い」

「……っ、ううぅ~……」

「あんたの実の両親も、家も。あんたを苦しめた奴、オレが絶対とっちめてやる」

「で。でも。わたしがいけないし……」


 そう言う葵の頬を、パチンと軽く音を出して包み込む。


「こら。何でそんなこと言うの。ネガティブ」

「だって。わたしがいなかったらっ。おとうさんも。おかあさんも。仲良かった……」

「そうかもしれないね。否定はしない。でも肯定もしない」

「っ。え……?」

「これもさっきあんたが言ったんだよ。オレがもっとちゃんとしてたらって。そう言った時、あんたが言ってくれた」

「……でも。それは……」

「しょうがないじゃん産まれちゃったんだから。……オレは、あんたと出会えて嬉しいよ? あんたは? 別にオレとは会わなくてよかったの? みんなとも?」

「い、いやだ……っ」

「でしょ? そう言ってんの。そんな過ぎたことをぐずぐず考えてもしょうがないでしょ。これからどうするか考えなよ。オレが助けてあげるから。あんたの手助けに、絶対なってやるから」

「……。うん。ありがとう。おひさまっ」

「え。それ引き摺る? 恥ずかしいんだけど」

「でも。わたしの太陽だもん。……ひなたくん」


 そう言って抱きついてくる葵に、必死に理性と戦う。


「(ふざけんなよ。こっちの気も知らないで……)」


 取り敢えず抱き締め返しはするけれど。